ジョージの新たな挑戦が始まった。澄んだ空気と自然豊かな滋賀県東近江。G1・2勝ラブリーデイ、17年安田記念の勝ち馬サトノアラジンなどを担当した山元譲治さん（38）は3月いっぱいで池江厩舎を離れ、4月1日に育成牧場「JOJI　STABLE」を開業した。
　1200メートルのトラックコースとウオーキングマシンに加え、夏頃には角馬場ができる予定。建設されたばかりの厩舎（40馬房）は対面型で広々とした空間。快適に過ごすことができる。山元さんは「これからがスタートだし、周りの方々から信頼される牧場にしたい」と目標を掲げる。
　父・重治さんは01年ドバイシーマクラシック（当時G2）、香港ヴァーズを制した名馬ステイゴールドの担当厩務員を務めた。幼少期から競走馬と触れ合う中で「僕は騎手になる」と自然に夢を持った。小学6年で乗馬を始め、中学3年でJRA騎手試験を受験。だが、結果は不合格だった。
　「色弱（色の見え方が違う）ということもあり、当時はもう無理かな…と諦めてしまった。今思えば、同い年の藤井騎手が海外から逆輸入で騎手に。もっと視野が広ければ。今でも心のどこかで後悔をしている」
　その後は栗東高校で馬術部に入部。インターハイ個人で優勝した。推薦で明治大学に入るが競馬の道を諦め切れずに2年で中退。北海道ケイアイファーム、京都の宇治田原優駿ステーブルで経験を積み、26歳でトレセン生活をスタートさせた。がむしゃらに馬づくりに取り組み、ラブリーデイでは香港遠征も経験。11年という月日はあっという間に過ぎた。「担当馬でG1を3つも勝つことができて、池江先生のもとで貴重な体験ができた。財産です」と感謝を口にする。
　独立を考え始めたのは3年前。馬の基礎づくりをメインにできる育成牧場が、これまで培った技術を最も生かせるのでは。やりたいことをやるか、迷いの中で最後に背中を押してくれたのが大学時代の同級生で自分のことを一番知っている妻のみゆきさんだった。
　「僕がモヤモヤしているのが分かっていたんだと思う。開業の話をした時“やっとやる気になったんだね”と後押しをしてくれた。いつも支えられています」
　その後は勉強の日々。たくさんの協力があって、立ち上げが実現した。「一度しかない人生。やろうと決めた以上、やらないと後悔する。騎手を諦めたこともあるので、今度は挑戦しよう」。公式ツイッターには武豊ら多くの関係者から応援メッセージが届いている。夢と希望を胸に、大きな一歩を踏み出した。

　◇山元　譲治（やまもと・じょうじ）1983年（昭58）4月19日生まれ、滋賀県出身の38歳。栗東高校馬術部でインターハイ個人を優勝。当時のキャプテンが池添学師だった。11年から栗東・池江泰寿厩舎に所属。池江泰郎厩舎でステイゴールドを手掛けた父・重治さんは現在、故郷・鹿児島県でサツマイモをつくっている。