【スプリンターズS】タイセイビジョン95点 黄金色に輝く栗毛、体調の良さ示す毛ヅヤ

2022年9月27日 05:30

タイセイビジョン

 黄金色の光沢で反転攻勢だ。鈴木康弘元調教師(78)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。秋のG1開幕を告げる第56回スプリンターズS(10月2日、中山)では人気のメイケイエールと共に、伏兵の1頭タイセイビジョンをトップ採点した。達眼が捉えたのは栗毛の輝き。12着に敗れた昨年とは見違えるほどの毛ヅヤが巻き返しのビジョンだ。

 天高く馬肥ゆる秋。私が隠居生活を送る筑波でも秋の味覚、栗が旬を迎えています。今年は好天に恵まれて例年より実が大粒だとか。栗の収穫量日本一を誇る茨城県。収穫の早い順に三角形の「丹沢」、コロンと丸い「大峰」、平たい「銀寄」、赤褐色の「石鎚」、果頂部に薄毛が生えた「岸根」など品種も豊富ですが、果皮の光沢の良さなら「筑波」でしょう。

 スプリンターズSで被毛に最も光沢があるのはタイセイビジョン。栗毛が初秋の少し優しくなった日差しを浴びて、栗の甘露煮みたいに黄金色に輝いています。栗の甘露煮はクチナシで染めて光沢を出しますが、被毛の輝きはブラシを使っても出せない。新陳代謝が活性化した時、皮膚の内側からにじみ出るように光沢を放つのです。もともと見栄えする明るい栗毛とはいえ、これほどの毛ヅヤはなかった。よほど体調がいいのでしょう。

 毛ヅヤに比べて馬体は470キロそこそこのさほど迫力を感じさせないつくり。馬格や筋肉量はナランフレグやヴェントヴォーチェに及びませんが、筋肉の質が高い。筋繊維の一本一本が強いのでしょう。

 立ち姿にはスプリンターの前向きな気性が表れています。頭を起こし、胸を張り出しながら立っている。顔を見れば、強い目力、力強く立てた耳、大きく開いた鼻こう…。闘争心がうかがえます。それでいて、尾には力みがない。秋風に尾の先を心地良さそうになびかせています。細くなった体を力ませていた昨年のスプリンターズS時(12着)とは雲泥の差です。天高く馬肥ゆる5歳秋を迎えました。(NHK解説者)

 ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の78歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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