【チャンピオンズC】サウジCで見えた松山の実直さ
2022年12月2日 05:30 【競馬人生劇場・平松さとし】
「悔しいです」
今春、サウジアラビアで、松山弘平騎手はそう言って唇をかんで続けた。
「ただ、負けたから悔しいんじゃないです」
挑戦したのはダート1800メートルのサウジC(G1)。コンビで挑んだのはテーオーケインズだった。
2歳のデビュー以来、ほとんどのレースでタッグを組むこの馬とは、昨年、帝王賞(n1)やチャンピオンズC(G1)を優勝。日本のダート王として、中東へ乗り込んだ。
「ゲートの中では決しておとなしい馬ではないので、できる限り後入れになる枠が良いです」
レース前にそう語ったが、3日前に行われた枠順抽選の結果、願いはかなえられず、比較的、早めに入れられる枠順になった。
「決められたものは仕方ありません。まだ少し時間があるので、最後まで諦めずに対策を考えます」
こう言うと、翌朝、早速ゲート練習をした。さらに翌日、レースの前日にも練習をして、教育をした。
そういった成果もあって、レースでは目立った悪さをすることもなく、前扉が開くとスンナリとスタートを切れた。
「ただ、道中はずっと落ち着くことのない厳しい流れで、馬自身が戸惑っている感じでした」と8着に敗れてしまった。
こうして、レース後に語ったのが、冒頭で記した「悔しい」という言葉。
「最近は海外遠征となると現地のジョッキーに乗り替わりとなるケースも増えています。そんな中で、引き続き僕を乗せてくださいました。そんなオーナーや厩舎関係者の期待に応えるには勝つことしかなかったのに、それができなかったのが悔しいんです」
実直な松山騎手だけに、関係者に対して恩に感じていたことだろう。だからこそ報えなかったのが悔しかったのだ。
その松山騎手とテーオーケインズは今週のチャンピオンズCで連覇を目指す。注目しよう。(フリーライター)