ジャパンCの道をたどり猛スピードで成長する香港競馬
2022年12月14日 12:00 ▼日々トレセンや競馬場など現場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は美浦取材班の高木翔平(32)が担当。11日の香港国際競走は地元・香港勢が3勝。異例のスピードで香港競馬は成長している。現地で肌で感じた香港の競馬熱についてリポートする。
日本馬14頭を追いかけ、6年ぶりに香港へ。現地のコロナウイルス対策はかなり厳しく、到着後3日間は宿泊ホテルでの待機(テイクアウトなどの買い出しはOK)とPCR検査が実施された。加えて、各自で行う毎日の抗原キットによる検査(抜き打ちでチェックが入る)。ワクチン接種を証明するパスの提示が全ての施設、飲食店などで義務付けられていた。日本と同じ感覚でうっかり屋外でマスクを外していると高額の罰金を請求されるという。実際、日本馬にも騎乗したモレイラは「日々のPCR検査をクリアしなければならない」という理由でレース当日までの囲み取材を断った。香港の出走馬関係者への海外メディアの取材は難しかった。
そこまで徹底した管理態勢を敷きつつ、世界各国から多くの出走馬関係者とメディアを招待した香港競馬界。開催への本気度が伝わったかのように香港ヴァーズを除く3競走を地元・香港馬が制した。特にジャックドール、パンサラッサ、ダノンザキッド、レイパパレ、ジオグリフの日本馬精鋭5頭がエントリーした香港カップはロマンチックウォリアーが4馬身半差の圧勝。スプリント、マイルも日本勢に付けいる隙を与えない内容で“香港馬強し”をアピールした。
以前、「日本の競馬界を手本にしなければ」と話したのは香港の名伯楽ジョン・サイズ師(68)だった。18年8月、中国本土の広東省に従化区(ツォンファー)トレーニングセンターが完成。今年の香港国際競走で活躍した馬たちは若駒時代から立派な坂路でトレーニングを積んできた世代だ。イメージがかぶるのはジャパンC。設立からしばらくは欧州勢の強さにひれ伏すしかなかった日本競馬サークルだったが、少しずつその差を詰め、今では日本馬が上位を独占する一戦となった。香港国際競走も同じ道をたどるような気がする。
21/22年シーズンで過去最高となる約2兆5000億円を売り上げた香港競馬。単一の主催者としてはJRAに次ぐ世界2位。人口1人あたり(香港は750万人)の売り上げは世界1位で、今年の香港国際競走の賞金も大幅にアップした。レース当日はパドックで現地の人気歌手がコンサートを行い、最終レース終了後には競馬場に豪華な花火が打ち上がった。香港勢の大勝利と数々の派手なイベントに大満足の様子だった現地のファン。「同じアジアに大変なライバル国が現れた」。そう思わざるを得ない光景だった。