転身後も変わらぬ“真面目さ”田中博師の初G1制覇期待

2023年2月17日 05:00

レモンホップと田中博師

 【競馬人生劇場・平松さとし】今から、えとがちょうど一回り前の2011年の冬。当時騎手だった田中博康現調教師から電話がかかってきた。「海外の競馬に触れてみたいので助けていただけますか?」。電話口の向こうで彼はそう言った。そこで当方の知人がいる国を何カ国か挙げると、その中から彼はフランスを選択。約2カ月後の4月12日、2人でパリのシャルルドゴール空港に降り立った。

 そのまま馬の町として知られるシャンティイへ行き、拠点となる寮に入ると、翌朝から現地の厩舎で調教にまたがった。当時、彼がベースとしたのはミケル・デルザングル厩舎。直後にドゥーナデンでメルボルンC(オーストラリアG1)や香港ヴァーズ(香港G1)を制し(いずれも11年)、ジャパンC(G1)にも参戦(13年5着)する伯楽は、田中博康騎手を受け入れる2年前にも来日。エリザベス女王杯(G1)に管理するシャラナヤを送り込んでいた(4着)。当時、デルザングル師は次のように言った。

 「そのエリザベス女王杯を勝ったのがヒロでした」

 “ヒロ”とは田中博康騎手のこと。クィーンスプマンテで逃げ切り、大穴をあけたあのレースにデルザングル師も参戦していたのだ。

 「フランスに来てスプマンテが名刺代わりになるとは思いませんでした」。そう語った田中博康騎手は、その後、当初の予定を大幅に上回り、約9カ月にわたって現地に滞在。競馬に乗るのは容易ではなかったが、1鞍でも多くの騎乗機会を得られるように毎朝、真面目に調教をつけ続けた。先に記した滞在先の寮はシングルベッドとシャワーにトイレがあるくらいの質素な部屋。そんな環境でも泣き言ひとつ言わず、長期に渡って頑張ったのだ。

 そんな真面目な姿勢は調教師に転身してからも変わらない。今年はレモンポップで根岸S(G3)を優勝。開業6年目で念願の重賞初制覇を飾ってみせると、今週末は同馬とフェブラリーSに挑戦する。真面目な頑張り屋が一気に初G1制覇を達成できるのか。応援したい。 (フリーライター)

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