【高松宮記念】ダディーズビビッドのオーナー田島大史氏「急死の母の分まで頑張れ」

2023年3月22日 05:30

育成牧場のビッグレッドファームを訪れ、2歳2月時のダディーズビビッドと記念撮影におさまる田島大史氏(オーナー提供)

 昨秋にスタートしたG1企画「時の人」が今季も続行。高松宮記念はダディーズビビッドを所有する田島大史氏(53)にインタビューした。20年夏の新馬戦で現5歳世代の一番星として真っ先に勝ち上がり、出世ロードを歩んでいる。前走・阪急杯の首差2着がここにつながる内容。16日に息を引き取った母ケイティーズギフトへの思い、自身2度目のG1出走への意気込みを語った。

 ――馬主になられたきっかけは? 
 「20代になり、トウカイテイオーが活躍していた時に競馬が好きになりまして、一口馬主をやるようになったんです。最初にひょんなきっかけで持つことになったポジーという馬が天皇賞・秋(95年)で5着の活躍。どんどん、のめり込みましたね。その後、自分の名前で走らせたい気持ちが強くなって馬主登録しました」

 ――所有馬はダディーズビビッドを含め、ケイティーズギフトが産んだきょうだいが活躍しています。
 「(ケイティーズギフトは)14年にサラブレッドオークションでケイディーズネイルを受胎した状態で購入しました。馬主になって最初に自分ひとりで所有したのがダンディーズムーンという馬なんですが、そのお父さんがアドマイヤムーンだったこともあり、ケイティーズ(ケイティーズギフトの祖母、アドマイヤムーンの曽祖母)の一族に注目していました」

 ――ダディーズビビッドのお兄さんに19年皐月賞(9着)に出走したダディーズマインドがいます。
 「ケイディーズネイルの1歳下なんですが、2頭目で皐月賞にまで連れて行ってもらって…。よく頑張ってくれました。レース後はすぐに立ち上がれなかったくらい感動しました。これまでにデビューした、きょうだい4頭が全て勝ち上がってくれて、こんな幸運があるのかなという思いです。この一族は新馬戦から強く、センスがいいんですよね」

 ――ダディーズビビッドの牧場時代の思い出は?
 「生まれた時から結構、大きくて。お母さんが高齢だったこともあり、体に負担がかかって大量に出血してしまったので、その後の2年間はコンディションを良くするのに精いっぱいで繁殖ができなかったんです。ビビッドには乳母を手配してもらったんですが、すくすく成長して胸前の筋肉がムキムキでしたね。ビビッドという名前の由来は慎重で警戒心が強いところがあったので、びびり君と呼んでいて、そこから、びび君になってビビッド(笑い)。目の覚めるような走りを、という意味の名前になりました」

 ――馬名にはダディーズがつく馬も多いですね。
 「ダンディーズムーンのダンディーズを短くしました。ダディーズマインドの名前をつける時に、自分の父が亡くなってしまい、父親を意味するダディーをつけたのもあります」

 ――ダディーズビビッドの新馬戦は20年6月。世代一番星でした。
 「まず千田先生から武豊さんにお願いするつもりと言われたのが最初のサプライズでした。実際にレースにも乗ってもらっての一番星。ビックリしましたし、忘れられないですね。馬主さんなら分かると思いますけど、新馬戦が一番緊張します。コロナ禍で競馬場がシーンとしていました。馬主席で横を向いても2、3人くらい。パドックにはお客さんも馬主さんもいない。確か、あの週から出走馬の馬主さんだけが入れるようになったんです」

 ――その後も活躍し、昨年は信越Sでオープン特別を勝ち、今年2戦目の前走・阪急杯で2着と好走しました。
 「信越Sを勝って蟻洞(ぎどう=蹄に空洞ができる病気)になったんです。今年初戦の睦月Sは様子を見ながら、装蹄師さんに接着装蹄をしてもらったそうです。千田先生からは阪急杯の時は大丈夫だったので蹄鉄にしたと伺いました。レース前は馬が痛みを覚えていて加減してしまわないか心配だったんですが、かばっていたら、あのタイム(芝1400メートル良馬場で1分19秒5)では走れないと思います。底力がありますね」 

 ――高松宮記念はダディーズマインドの皐月賞に続き、オーナーにとって2度目のG1になります。
 「マインドの皐月賞に感動し、もうこれ以上、望むものはないと思っていたので、ビビッドの活躍はサプライズの連続ですね」

 ――お母さんのケイティーズギフトにも頭が下がりますね。
 「ギフトは12日夜にシルバーステートの子(牡)を出産したんです。(サトノダイヤモンド産駒)ダディーズブライトの2歳下です。ですが、その後に容体が急変し、膀胱(ぼうこう)が破裂してしまい、16日に息を引き取りました。21歳でした。僕からしたら功労馬中の功労馬。今年で繁殖を引退する予定で、余生はゆっくりしてもらおうと思っていたところでした。これまで長く接していて、北海道に入ったら真っ先に合うのはギフトです。ケイちゃーんと大きな声で呼びかけたら、300メートルほど遠くにいても、声を覚えてくれてカーッと来てくれる頭のいい馬でした」

 ――ダディーズビビッドには、お母さんの分まで頑張ってほしいです。
 「自分の子供が頑張ってくれるのと変わらないような気持ちです。相手は強いですけどね。阪急杯の1週前追い切りと比べても、素人目で活気というか、コーナーワークが全然違うように見えて、状態はいいと思うので、どこまでやれるか。ビビッドらしい走りをしてくれたら満足です」

 ――最後に。
 「私にこんな機会を与えてくれた千田調教師や厩舎の皆さん、育ててくれた北海道の牧場の皆さん、ビビッドに携わってくださる全ての方に感謝です。ありがとうございます」

 ◇田島 大史(たじま・だいし)1969年(昭44)10月28日生まれ、京都府出身の53歳。株式会社BBコミュニケーションズ代表取締役。主な所有馬はダディーズマインド(19年皐月賞9着)。12日の中京3R(3歳未勝利)で祖母ケイティーズギフトのダディーズウォリアが勝利した。

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