【追憶の高松宮記念】00年キングヘイロー悲願のタイトル奪取 坂口師「これが男泣きなんですね」
2023年3月22日 07:00 00年高松宮記念。前年のスプリンターズSで1、2着だったブラックホークとアグネスワールドが2強。それぞれ単勝2・2倍と2・7倍。ブラックホークは前哨戦の阪急杯を完勝。アグネスワールドは休み明けだったが、スプリンターズSの2走前にはフランスでG1アベイドロンシャン賞を制覇。国内G1初勝利は譲れないところだった。続いて5・4倍マイネルラヴと外国産馬が上位人気を独占。離れた4番人気(12・7倍)がキングヘイロー。
最内枠のメジロダーリングが先頭へ。アグネスワールドが2番手で、前半3Fは33秒1。同日8Rの500万・小牧特別が同33秒2。500万級としてはかなりのハイペースだが、G1なら平均よりやや速いぐらい。ただしメジロダーリングは息を入れる間もなく、4コーナーからアグネスワールドが押し上げてくる。当時まだ改修前の中京は小回り。仕掛け遅れてはならぬとばかり、後続も一気に差を詰めて、直線では17頭のメンバーの半分以上に見せ場がある激しい競り合い。その競り合いの外からブラックホーク、さらに外、馬場の真ん中外寄りからキングヘイローが伸びる。キングヘイローが馬群をまとめてかわし、ゴール前で粘るディヴァインライトをかわした。
ゼッケンと鞍を手に、キングヘイロー鞍上の柴田善臣が笑顔で引き揚げてくる。感極まる坂口正大調教師はあふれる涙を拭いもせず、がっちりと握手を交わした。キングヘイローはG1挑戦11度目にしてやっとつかんだ悲願のタイトル。同師は「こんなにうれしいことで涙を流せるんだから、これが男泣きなんですね」と目頭を抑えた。
各馬が早めに仕掛けて、結果的に上がり3F35秒5もかかるタフなレース。先に抜け出したディヴァインライトを最後のひと伸びでかわしたのは、まさに良血のプライドと勝利への執念だった。
98年クラシック戦線ではスペシャルウィーク、セイウンスカイと共に3強を形成したが、キングヘイローは無冠。その後もG1で人気は集めるものの勝てなかった。坂口正大師は「とにかくタイトルを獲らせたい、いや勝たせるのが私の使命だ」との決意を胸に中距離からマイル、さらにスプリント、そしてダートにも出走させた。ローテーションを批判する手紙も厩舎に送られてきた。苦悩の日々を耐え抜き、ついにキングヘイローが勲章をつかみ取った。
悲願成就をもたらした柴田善臣は「スタート前からいい感じで燃えていた。気分を損ねないことだけを心がけた」と振り返った。外から外を気分良く追走させ、力を十分に引き出した。
2着ディヴァインライトの鞍上は、かつてキングヘイローの主戦を務めた福永祐一。「やることはやった。馬の力は引き出せたと思う」と騎乗には納得。それでも口をついたのは「一番いてほしくない馬が前にいた」。のちの名手も当時22歳の若手。それまで6度G1に騎乗しながら、自身の手ではかなわなかったキングヘイローの戴冠。至らなかった自分のふがいなさを思ったのか、表情は複雑だった。
※キングヘイローG1(00年高松宮記念まで)
【98年】全て福永騎乗
皐月賞 3番人気2着
ダービー 2番人気14着
菊花賞 3番人気5着
有馬記念 10番人気6着
【99年】安田、宝塚、秋天は柴田善、あと2つは福永
安田記念 2番人気11着
宝塚記念 5番人気8着
天皇賞・秋 9番人気7着
マイルCS 4番人気2着
スプリンターズS4番人気3着
【00年】2戦とも柴田善
フェブラリーS1番人気13着
高松宮記念 4番人気1着