中條師 馬術経験生かし豪州で奮闘中

2023年7月5日 10:15

オーストラリアで厩舎を構える中條大輝師

 ▼日々トレセンや競馬場など現場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は栗東取材班の田村達人(30)が担当する。オーストラリアの競馬学校でJRA騎手の藤井勘一郎と同期だった中條大輝(40)を取材した。15年にオーストラリアの調教師免許を取得。馬術で培った経験を生かし、競走馬の育成に励んでいる。

 オーストラリアのバラナ競馬場で厩舎を構える日本人調教師がいる。中條師は埼玉県鴻巣市で育った。競馬に興味を持ったきっかけは名馬ライスシャワー。競走馬が走る姿の美しさに魅了され、いつしか馬の仕事がしたいという思いが芽生えた。中條師は「ある時、雑誌でオーストラリアに競馬学校ができると知り、中学卒業後にオーストラリアに行きました」と振り返る。

 そこで出会ったのが今でも交流のあるJRA騎手の藤井勘一郎。在学中はずっと同じ時間を過ごした。「彼は騎手を目指し、僕は途中で乗馬に興味を持った。卒業後は別々の道を歩むことになったけど、振り返ると楽しいことばかり。学校を卒業した後、僕は馬術選手になりました」。イギリス、ドイツ、フランスなどヨーロッパ大会を中心に飛び回った。キャリアを積んでいく中で、ふと疑問に思ったことがある。「アルバイトで競走馬の調教に乗っていたのですが、乗馬の技術を競走馬に取り入れたらどうだろうと感じていました。馬術はうまく体を使うことが大事。それを生かしたらもっと速く走れる」と興味が出た。

 競馬を一から勉強。15年にオーストラリアの調教師免許を取得し、厩舎を開業した。しかし、そんな甘い世界ではない。「乗馬の技術を取り入れたけど結果につながらず。壁にぶち当たった」。悩んでいる時に一つの出会いがあった。馬術でつながりのあった大岩義明氏(国際的な馬術選手)から親交のあるJRA調教師の藤原師を紹介してもらったのだ。4年前に栗東トレセン訪問。藤原師は同志社大学で馬術部に所属していた経歴があり、そこで学んだ技術をトレーニングに取り入れている。「実際に結果を出している人の姿を見て勉強になりましたし、藤原先生からは“自分の経験を信じて、俺らが引っ張って行こう”との言葉をもらいました」。心に刺さった。

 オーストラリアに帰国後は試行錯誤を重ね、結果が出るようになった。開業当初、数頭だった管理馬は少しずつ増え、今では35頭を管理している。厩舎スタッフは2人の日本人ライダーを含む9人。休む暇がないほど充実した日々を過ごす。そしてあす6日、4年ぶりに栗東トレセンを訪れる。「藤原先生と会えるのが楽しみ。今回はあいさつ回りが中心ですが少ない時間の中で、しっかり勉強します」。4年前からひと回りもふた回りも大きく成長した。久々の栗東は以前と違った景色に見えるかもしれない。

 ◇中條 大輝(ちゅうじょう・だいき)1983年(昭58)4月10日生まれ、埼玉県鴻巣市出身の40歳。動画編集が趣味でYouTubeチャンネル「Japanoz Stables」でオーストラリア競馬の魅力を配信している。

 ◇田村 達人(たむら・たつと)1992年(平4)11月12日生まれ、大阪市出身の30歳。高校卒業後に北海道ケイアイファームへ。育成&生産に携わる。予想スタイルは取材の感触重視。

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2023年7月5日のニュース