美浦新坂路期待も根本的問題解決必要

2023年9月27日 11:15

<坂路試走会>新しくなった坂路を試走する各馬(撮影・郡司 修)

 日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。先週に引き続き今週も、東京本社の鈴木悠貴(32)が担当。来月4日から正式運用開始となる新坂路の利点、ひいては“西高東低”打破について考える。

 約3年半の改造工事を経て、美浦トレセンの新坂路がついに完成した。コース前半部の地面を掘り下げたことで、高低差は栗東より1メートル高い33メートル(旧坂路+15メートル)に。また、タイム計測のゴール位置を以前より50メートル手前に移動させることで、減速区間が延長。以前より安全かつ負荷のかかる調教が期待される。

 スピードが出ないため馬の前脚に負担をかけずに、心肺機能を上げられる坂路。その機能性をずっと評価してきた国枝師は「人間の筋トレと一緒で、負荷をかければより馬は鍛えられる。今後馬のレベルは間違いなく上がると思うよ」とその効果に太鼓判。試走会でコースを確かめた小島師も「凄いものができたな…という感じ。景色は違うけれど馬場はノーマルで走りやすかった。これまでのものより、いいものができたことは確か」と喜んだ。

 設備は確実に整い始めている。だが“西高東低”打破には、立地から連なる根本的な問題解決が必要ではないか。例えば夏開催で言えば、栗東からは新潟、小倉どちらにも輸送しやすいが、美浦は小倉に輸送しづらい。レースの選択肢が狭まり、適条件を選びにくくなる。そうなるとオーナーが馬を預けたくなるのは栗東。こうして生まれる馬質の差を改善すべく、さまざまな施策を考えていかなければいけない。JRAが掲げる「公正競馬」実現へ。“アスリートファースト”の精神を持ちつつ、さらなる変革が待たれる。

 ◇鈴木 悠貴(すずき・ゆうき)1991年(平3)4月17日生まれ、埼玉県出身の32歳。千葉大学法経学部卒。今年1月から競馬担当。

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