【スプリンターズS】ナムラクレア 悲願のG1制覇へ機は熟した!短距離界の新女王に向けてラスト11秒7

2023年9月28日 05:30

坂路を単走で追い切るナムラクレア

 実りの秋を迎えた。秋競馬JRA・G1開幕戦「第57回スプリンターズS」(10月1日、中山)の追い切りが27日、東西トレセンで行われ、キーンランドCの勝利で弾みをつけたナムラクレアは長谷川浩大師(39)を背に栗東坂路で絶好の動き。昨年の当レース5着、今春の高松宮記念2着など経験を積み、確実に力をつけている。新スプリント女王の座へ、機は熟した。同レースは出走馬が決まり、枠順が確定する。

 充実ぶりが際立つ。ナムラクレアが開門直後の坂路で気合をみなぎらせた。元騎手の長谷川師が自ら稽古をつけ、走りたい気持ちを充満させながら、前半2F(1F=200メートル)を15秒0→14秒2でゆったり入る。そこから軽く促すとギアが切り替わり、馬なりで12秒5、ラスト1Fはこの日の坂路で2番目に速い11秒7と右肩上がりのラップを刻んだ。長谷川師は「とても良かったと思います。気負うことなくリズム良く、緩急もつきましたし、最後まで集中して、芯の入った走りをしてくれました」と満足げに振り返った。

 昨年までの坂路主体の調教から、今年はCWコースの追い切りを取り入れた。この中間も先週まで2週連続でコース追い。1週前に浜中騎乗でいっぱいに負荷をかけ、当週は坂路馬なりが今年のパターンだ。その背景には5着に敗れた昨年のスプリンターズSがある。浜中は「ゴール前で甘くなってしまった」と敗因を挙げ、そこからフォームの改善や集中力の向上を図り、体質がしっかりしたタイミングでコース追いという踏み込んだ調教を課した。その成果がシルクロードSやキーンランドCでの重賞V、また高松宮記念も決して得意ではない不良馬場にもかかわらず最後まで脚を伸ばして2着に奮闘した。

 ローテは大一番を見据えている。賞金加算のために函館スプリントS1着→北九州記念3着と夏場に2戦した昨年と違い、キーンランドCの夏1戦で本番に備えた。中4週となる中間の様子について、長谷川師は「想像しているより回復が早かったですね。精神面も含めて成長しているし、いい状態で迎えられると思います」と好感触。大舞台で経験を積み、心身ともにたくましさを増した。

 狙うのは頂点しかない。長谷川師が「運も必要ですけど彼女が力を出し切ってくれたら」と言えば、浜中も「十分にG1を勝てる力を持った馬。しっかり結果を出せるように一生懸命乗りたい」と決意を新たにした。昨年の覇者ジャンダルム、今春に高松宮記念を制したファストフォースが既に引退し、群雄割拠の短距離界。新女王の座へ、突き進む。

 《長谷川師「芯の入った走り」》開業5年目の長谷川厩舎は先週2勝を挙げ、今年JRA19勝。昨年マークしたキャリアハイの20勝超えがはっきり視界に入っている。今週はスプリンターズSのナムラクレアはもちろん、ウインルーティン(1勝クラス)やメモリーレゾン(西宮S)、ジューンオレンジ(2勝クラス)など期待馬がスタンバイ。長谷川師は「オーナーの理解があり、いい環境でやらせてもらって成績を伸ばせているのかなと。年間を通してモチベーションを高くして、やれているし、とにかく去年よりは…というのはあります」とかみしめる。

 師匠・中村均師(19年2月末に定年引退)の下で所属騎手、調教助手として厩舎一丸で馬づくりに励んだ経験がある。だからこそスタッフへの感謝を忘れない。「(自身は)口うるさい方だと思います」としながらも「真面目なスタッフが多く、コミュニケーションを取って1頭ずつ考えながら、やっています」と胸を張った。師匠から引き継いだヤマニンアンプリメで19年にJBCレディスクラシック(Jpn1)制覇。11度目のチャレンジでJRA・G1のタイトルを獲りにいく。

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