【秋華賞】リバティアイランド100点 素晴らしいダンダラ模様 京都を席巻する新選組の女隊士だ
2023年10月10日 05:30 1強ボディーに吉兆!鈴木康弘元調教師(79)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。「第28回秋華賞」(15日、京都)ではリバティアイランドに唯一満点をつけた。達眼が捉えたのは、その後肢にくっきりと映った山形模様。史上7頭目の牝馬3冠制覇をもたらす吉兆とは…。
牝馬3冠獲りの原動力となる分厚い後肢には幕末の剣豪軍団、新選組の隊服でもおなじみの山形のギザギザ模様。あさぎ色の羽織の袖口に白く染め抜かれた「ダンダラ模様」と呼ばれるデザインです。競走馬もこんな模様のマーカーで格好良くオシャレすることがある。リバティアイランドだけではありません。私も調教師時代にはブラシで管理馬にこの模様を施したものです。
リバティアイランドはオークスでも後肢に3つのダンダラ模様を付けていました。当時はあまり目立ちませんでしたが、今回は新選組の隊服のように鮮明に映ります。皮膚の状態が良くなったからです。夏負けが尾を引いてパサパサになった皮膚にこんな模様は映らない。ビロードのようにしっとりしたツヤ肌を備えているからです。今春以上に新陳代謝が上がっているのでしょう。今夏は記録的な猛暑となりましたが、ダメージもなく無事に乗り切れたことをダンダラ模様が雄弁に語っています。
3歳春の段階で完成度の極めて高い体つきでした。古馬のように盛り上がったキ甲(首と背中の間の膨らみ)。それに連動して岩のように隆起した首の付け根。トモにも古馬みたいな筋肉のボリューム。短めの背中は発達したキ甲と腰の筋肉に挟まれて余計に短く映ったほどです。体つきは春当時とさほど変わっていませんが、筋肉にうっすらと浮かぶ血管が一層目立つようになった。オークス時には前腕(前肢)とスネ(後肢)に見られた血管が今回は膝下(前肢)、飛節下(後肢)にまで及んでいます。鍛え込まれた証です。
今春同様、立ち姿には余裕があります。ハミを穏やかに受けながら気持ち良さそうに立っています。背も腹下も短いマイラー体形なのにオークスを圧勝したのはなぜか。この立ち姿に見られるような落ち着きがあるからです。絶対能力の違いが距離の壁を突破させたとも言えるでしょう。ともあれ、秋華賞の2000メートル戦なら一層レースはしやすい。
牝馬3冠に当確ランプをつけるのはトモに映ったダンダラ模様と、分厚い筋肉に浮かんだ血管。京都を席巻する新選組の女隊士です。 (NHK解説者)
◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の79歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~2004年に日本調教師会会長。JRA通算795勝。重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなどで27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。