【マイルCS】エルトンバローズ95点 百獣の王の風格 泰然自若の立ち姿

2023年11月14日 05:30

エルトンバローズ

 これが王者の立ち姿だ。鈴木康弘元調教師(79)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第40回マイルCS(19日、京都)ではG1初挑戦のエルトンバローズをシュネルマイスター、セリフォスのG1ホースと共に1位指名した。達眼が捉えたのは“百獣の王”ライオンを想起させる泰然自若としたたたずまい。5連勝でマイル界の頂点に駆け上がる勢いだ。

 英国のシンガー・ソングライター、エルトン・ジョンが映画音楽を担当した作品といえば、ディズニーの長編アニメ「ライオン・キング」。百獣の王として君臨する宿命を負ったライオンの子シンバの成長を描いたミュージカル仕立ての作品です。そのアニメにエルトンが提供した「愛を感じて」は94年アカデミー歌曲賞、ゴールデングローブ賞主題歌賞などを受賞しました。

 エルトンバローズの立ち姿からうかがえるのも百獣の王の貫禄です。その口元には驚かされた。リング型とノーマル型の2本のハミをかまされても、嫌な顔ひとつしない。ハミを気にして口角に泡を付けている昨年のマイル王者セリフォスとは対照的な余裕あるハミ受け。引き手を遊ばせながら穏やかにくわえています。どちらが王者か分からない。目をつり上げたソーヴァリアントとは対照的な涼しい目でゆったりと立っています。どちらが古馬だか分からない。百獣の王を想起させる泰然自若としたたたずまいです。未勝利から4連勝中の3歳馬。この立ち姿に凡百の上がり馬との決定的な違いがあります。

 ブライアンズタイム(母の父)の血統を体現する重厚感あふれるボディー。ライオンのように太い首、分厚い肩、短めの背中…。ラジオNIKKEI賞、毎日王冠の重賞2勝は1800メートル戦ですが、体形的にはマイルがベスト。舞台も合っています。

 肋(あばら)がパラッと見える腹周り。仕上がりも万全です。皮膚が少し厚く映りますが毛ヅヤは良好。冬が近づいても新陳代謝は落ちていません。

 「ライオン・キング」の主人公シンバは、やがてライバルを倒し新たな王となります。エルトンバローズも古馬勢を一蹴して新たなマイル王の座に就くかもしれません。プロ野球の日本シリーズではトラがアレのアレを達成しましたが、競馬界ではライオンのような泰然自若とした立ち姿がアレを予感させます。(NHK解説者)

 ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の79歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~2004年に日本調教師会会長。JRA通算795勝。重賞27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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