【有馬記念】ライラック ファンが推し上げた美浦のアイドル!投票上位で出走権ゲット

2023年12月20日 05:30

有馬記念に出走するライラック(撮影・田井秀一)

 美浦のアイドルは引き立て役では終わらない。G1水曜企画「馬(バ)チェロレッテ」では前線記者が買いたい馬の魅力をアピールして「真実の馬券」に迫る。田井秀一記者(30)が推すライラックはファン投票により出走枠を勝ち取った。母やきょうだいも担当した三尾一之助手(47)の愛情と、ファンの熱烈な思いを背に、グランプリの大舞台に立つ。

 フルゲート「16」の出走枠に20頭がエントリーした今年の有馬記念。ライラックの出走馬決定賞金順は18番目で、本来なら除外対象。しかし、彼女は有馬に出る。ファン投票上位10頭に与えられる優先出走権を獲得。1万5606票の熱い思いが、ライラックをグランプリのスタートラインに押し上げた。

 担当の三尾助手は「ファンの方々のおかげ。(相沢師が)早めに出走表明したのが効果的だったし、友人もSNSを通じて熱心に呼びかけてくれた」と感謝する。続けて「お兄ちゃんのおかげもあるのかな」。半兄ブラックホール(19年札幌2歳S優勝)は引退後、相馬野馬追に参加する乗馬に転身し、X(旧ツイッター)で1万以上のフォロワーを誇る人気者。インフルエンサーとなった兄の援護射撃も大きかった。

 厩舎ゆかりの血統。三尾助手は兄妹の母ヴィーヴァブーケも現役晩年に担当。「お父さん(オルフェーヴル=11年3冠馬。グランプリは11、13年有馬記念、12年宝塚記念で3戦3勝)のイメージと違って性格は素直で手がかからない。お母さんの良さを引き継いでいる」。好きなものはニンジンとカメラ。レンズを向ければ、鼻面を近づけ愛嬌(あいきょう)を振りまく。くりくりした瞳も相まって、さながらアイドルだ。

 一方で、「嫌いなものはオレ」。競馬が近づくと戦闘モードに突入。三尾助手に飛びかかることも。「競馬を使った後は全然大丈夫なんだけど…。オンオフが凄くはっきりしている。物分かりが良すぎるぐらい」。デビュー2戦目の京都2歳Sでは馬運車に入ることを拒否し約1時間にわたって格闘。だが、練習を重ねた次戦以降はすんなり入るようになった。「嫌なことは嫌!とはっきりしていて我は強いけど、納得しちゃえば大丈夫。学習能力が高い」と分析する。

 実力は折り紙付き。特に上がり時計がかかる中山を得意としており、昨年1月のフェアリーSではスターズオンアースを差し切った。「ゆったり走れる中山はいい。牝馬の中ではトップレベルに位置していると思う」とG1馬8頭を相手に回しても気後れはない。

 「初めて出たダービー(01年マイネルライツ=13着)は除外対象から急きょ繰り上がって、緊張でおなかが痛くなった。人間が硬くなってもろくなことはない。平場でも有馬記念でもやることは同じ」。ダービー3度出場の経験を糧に、三尾助手は平常心で愛馬に寄り添っている。ドリームレース出走を後押ししたファンへの恩返しは結果で示す。十八番(おはこ)の高配当で。

 《アイ称は「社長」》ライラックの取材中、隣の馬房からは半弟アドミラルシップが顔をのぞかせた。三尾助手が牧場時代の幼名から“金太郎”と呼ぶ2歳馬は有馬記念4日後のG1ホープフルSに出走予定。「まだ伸びしろがたっぷり。攻め馬をびっしりやっていない中、新馬戦であれだけのレースができた」と上積み十分だ。ちなみに、ライラックの呼び名は「最初はラッキーライラック(ファンに“ラララ”の愛称で親しまれる)をまねて“ララ”だったけど、今は賞金をいっぱい稼いでくるから“社長”」だとか。社長と金太郎の姉弟G1連勝にも期待がかかる。

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