藤沢イズム“継承”若手調教師台頭 栗東滞在で関西GⅠ席巻

2023年12月20日 10:20

11月12日、エリザベス女王杯を制したブレイディヴェーグと宮田師(左)

 日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は東京本社の田井秀一(30)が担当する。25年ぶりに平地G1年間勝ち越しを決めた関東馬の躍進を考察した。

 関東13勝、関西9勝。“西高東低”と叫ばれて久しい中央競馬に確たるターニングポイントがやってきた。四半世紀ぶりに、JRA・G1で関東馬が勝ち越したのだ。

 躍進の要因はまず若手調教師の台頭。今年は38歳田中博師(レモンポップ)、42歳黒岩師(アスコリピチェーノ)、43歳宮田師(ブレイディヴェーグ)が新たにG1トレーナーの仲間入り。今や美浦をけん引する存在となったイクイノックスの木村師を筆頭に、そのほとんどがレジェンド藤沢和雄元調教師が現役時代に開講していた“青空教室”の受講生。取材中も「藤沢先生が言っていたように…」と名伯楽の金言を引用するシーンが見られる。藤沢イズムの芽吹きを感じる一年でもあった。

 もはやソフト面に東西の差はないのか。栗東の有力厩舎のスタッフは「北海道などで関東の厩舎と一緒になるが、(スタッフの技術などに)明確な差があるとは感じない」と証言。続けて「今年の関西G1は栗東滞在の関東馬にやられた印象。結果が出ている以上、前日輸送が合わない馬は美浦に滞在させるとか、こちらも東に倣って何か工夫していかないと…」と危機感も口にする。

 平場を含めたトータルの勝利数は東1437勝、西1950勝(先週終了時点)といまだに大きな開きがある。だが、これもハード面の改善によって、今後是正される可能性が高い。美浦トレセンでは今秋から新坂路が供用スタート。高低差33メートルは旧坂路より15メートル増加。栗東よりも1メートル高い。東西格差の要因とされた坂路が栗東と同水準となれば、馬主サイドが敬遠する理由はなくなる。クラブ法人の関係者も「預託先も西高東低が続いたが、今は美浦の厩舎の選択肢も広がっている」と話す。

 その新坂路はコースの左右が大きな壁で、ゴール後の減速区間が長い。国枝師は「トレーニング効果が上がっただけでなく、人と馬の折り合い向上にも有用」と分析。G1出走馬の最終追い(秋華賞=エミュー)に坂路を最初に使用した和田正師は「坂を使い始めてから体全体を使ってしっかり走れるようになってきた」と効果を実感する。

 23年が歴史的転換点となったのは間違いない。一年を象徴する有馬記念の性質上、ここも関東馬が締めくくる気がしてならないが、はたして――。

 ◇田井 秀一(たい・しゅういち)1993年(平5)1月2日生まれ、大阪府出身の30歳。阪大法学部卒。道営で調教厩務員を務めた経験をもつ。BSイレブン競馬中継解説。netkeiba「好調馬体チョイス」連載中。

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