【直前インタビュー(1)】藤田晋オーナー 10・6凱旋門賞出走シンエンペラー「いいところがある」
2024年10月2日 05:00 日の丸を背負い、熱狂を生み出せ。JRAが馬券発売するフランスG1「第103回凱旋門賞」(パリロンシャン、芝2400メートル)は6日にゲートイン。日本調教馬唯一の参戦となったシンエンペラー(牡3=矢作)を所有するのはサイバーエージェント社長の藤田晋氏(51)だ。BCクラシック(11月2日、米国デルマー)に出走予定フォーエバーヤング(同)の遠征も控える“勝負の1カ月”直前の思いを聞いた。
同一年に世界最高峰の競走である凱旋門賞、BCクラシック両方に所有馬が出走すれば、日本人オーナーでは初めての快挙。
「楽しみが渋滞しています。サッカー(※社長兼CEOを務めるFC町田ゼルビアがJ1初挑戦で首位争いを演じている)もあるので。サッカーは楽しいとかではなくて、ただただしびれているんですけど、競馬の方は楽しいです。馬主4年目でこうなるとは全く想像していなかった。まだJRAのG1を勝っていませんから」
凱旋門賞は海外G1の中でも、国内の競馬ファンにとっては特別な存在。
「印象的だったのはエルコンドルパサー、オルフェーヴル。もちろん特別なレースだと感じています」
日本の主要な競馬ゲームは凱旋門賞を勝てばエンディングが流れる。子会社のCygamesが開発する「ウマ娘」でも凱旋門賞をテーマにしたシナリオが用意されている。
「私もダービースタリオンには時間を費やしましたが、まだ凱旋門賞には行けてもいません。まさか現実で先に…。ただ、競馬関係者の方に聞くと、凱旋門賞だけが特別ではない、と。この“お祭り”に誰かがピリオドを打たないといけない、そういうレースなんだと思います」
シンエンペラーは現地ブックメーカーで上位人気に支持され、悲願成就のチャンスは十分にある。
「先人が何度もチャレンジしてきている中で“自分が獲ろう”というのは畏れ多いです。競馬ファンとしては武豊さんに獲ってほしい思いもありますし…。そういう意味では、日本のトップである矢作厩舎が勝つというのは意義があるのでは、と思っています」
町田ゼルビアではプロ経験のない黒田剛監督のリーダーシップを見抜き抜てき。矢作調教師にも全幅の信頼を置いている。
「本当に献身的で、厩舎のスタッフにしっかり任せてやる気を引き出して、チームで喜びを分かち合っている。まさにリーダーだな、と。馬を育てる手腕が注目されがちですけど、それ以上にマネジメント能力が凄いです」
前哨戦で海外初戦だった愛チャンピオンSが3着。好内容のレースが現地でも高く評価されている。
「正直未知数で、全くダメだったらフランスに見に行くのはやめようかと思っていましたが、がぜん行く気になりました。レース前に矢作先生に目標を聞いたら3着以内とおっしゃっていたので合格点だったんですけど、レース後のインタビューを見ると先生も坂井瑠星騎手も沈痛な面持ちで。3着以内って言ってたじゃん!って(笑い)。かなり悔しそうでしたね」
シンエンペラー自身にとっては生まれ故郷での大一番。2年前の夏、仏ドーヴィルの1歳セリにて約3億円(当時のレート)で競り落とした。
「予算は3億円までに設定していました。ぴったりそこで止まって。危うく買い逃すところでした。うれしいのか悲しいのか予算上限でしたけど、今振り返ればあの時買えて凄く良かったです」
凱旋門賞馬ソットサスの全弟という良血馬。馬名には“ダービーを獲りたい”という思いを込めた。
「いつかは欧州で走る姿を見たいと思っていましたが、当初は3歳秋に凱旋門賞に行こうとは考えていませんでした。ダービー前に“いい走りをしたら”と先生が言い出して、そこそこいい結果(3着)でしたし、根性があるなと思ったので挑戦を決めました。血統も魅力的で何とか種牡馬にしたい馬。もしもいい結果が出れば、種牡馬としての価値も上がると思うので」
前日に現地入りし、レース当日に帰国の途につく弾丸日程で応援予定。改めて期待は。
「元々は来年以降に向けた記念受験のつもりでしたけど、前走の内容や馬場適性、力関係、叩いた上積みを考えると結構いいところがあるんじゃないかと楽しみにしています。ケンタッキーダービーはホスピタリティーが素晴らしかったですけど、凱旋門賞はアウェー感があると聞いています。でも、アウェーの厳しさで戦うのはサッカーで慣れていますから(笑い)。僕が意気込んでも仕方がないので、あとは祈ります」
◇藤田 晋(ふじた・すすむ)1973年(昭48)5月16日生まれ、福井県出身の51歳。青学大卒。98年「サイバーエージェント」を設立し、代表取締役社長に就任。00年に当時史上最年少26歳で東証マザーズ上場を果たした。18年からJリーグFC町田ゼルビアのオーナー。同年に発足した麻雀プロリーグ・Mリーグの初代チェアマンも務める。馬主としては21年フェニックス賞(デュガ3着)が初出走。これまでJRA通算66勝(1日現在)を挙げている。子会社のCygamesが「ウマ娘 プリティーダービー」を運営開発。