聖奈 美浦での武者修行を再ブレークのきっかけに

2025年4月24日 05:05

今村聖奈

 日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は東京本社の高木翔平(34)が4年目の今村聖奈を取り上げる。1年目に大ブレークした21歳は現在、慣れ親しんだ栗東を離れて美浦で武者修行中。新たなチャレンジに踏み切った経緯を明かした。

 今村聖奈は栗東トレセンを離れ、8日から美浦に拠点を移した。約7週を予定する滞在期間。少しでも関東とのつながりを強くし、夏は福島、新潟の“関東ローカル”で騎乗する見込み。滞在から10日間が過ぎ、彼女に話を聞いた。「こちらはフラットワークが多めだったり、西と東では同じ30分でも(調教メニューが)全然違う。時間があれば乗馬クラブに行ったり、毎日が新鮮です。チャレンジを後押ししてくれた方たちや(師匠の)寺島先生に感謝したいです」と明るく語った。

 鮮烈なデビューを飾ったのが3年前の22年。51勝を重ね、加賀武見、武豊、福永、三浦に続く史上5人目の新人年間50勝を達成した。藤田菜七子元騎手の43勝を更新した「女性騎手の年間最多勝」は、まだ破られていない。今村は当時を「たくさん勝てる馬を用意していただきながら、目の前のことだけで精いっぱいになってしまっていた。先のことを考える余裕がなかったですね」。落馬負傷での離脱もあったが、その後は23年25勝、昨年6勝と成績が落ちた。思うような上昇カーブを描けなかった。

 その間に台頭したのが美浦所属で同期の佐々木だ。23年68勝、昨年77勝とブレーク。「私が1年目に勝てている時に(同期のみんなは)反骨心を持って頑張っていたんだと思う。当時の私にそういう反骨心みたいな気持ちはなかったかもしれない」と今村。追われる立場が追う立場に変わり、口調からは悔しさがにじむ。「自分が悪いんですけど、もどかしい。今は何か新しいことにチャレンジしたいなと思って」。かつての“弱さ”を隠すことなく、先に進もうとする覚悟を口にした。

 滞在後は2週連続で勝っている。中山の1週目に美浦所属ソーニャシュニク(武井厩舎)で勝つあたりはさすがだ。「初日からアピールができたのは良かった。栗東に帰っても“関東で頑張っていたから頼みたい”と言ってもらえるのが理想です。絶対に何かをつかんで帰りたい」。調教の合間、今村は最も関係者の往来が激しいベンチの真ん中に座る。最初はポツンと1人でいることもあったが、日を追うごとに周りに人が増えているのは彼女の魅力か。実り多き美浦での日々が、再ブレークのきっかけとなることを祈っている。

 ◇高木 翔平(たかき・しょうへい)1990年(平2)生まれ、広島県出身の34歳。15年入社で23年から東京本社予想を担当。BSイレブン出演中。

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