欧州直線競馬で才能開花したアグネスワールド
2025年7月11日 05:05 【競馬人生劇場・平松さとし】
今から25年前、2000年のちょうどこの時期、7月13日の話だ。英国のニューマーケット競馬場で行われた、欧州伝統の短距離G1ジュライCを、日本のアグネスワールドが制した。管理していたのは森秀行調教師、騎乗していたのは武豊騎手。このコンビは1998年、シーキングザパールでフランスのG1モーリスドゲスト賞を勝っており、アグネスワールドでは前年のアベイユドロンシャン賞(フランス)に続く欧州G12勝目となる快挙を成し遂げた形だった。
「コーナリングがいまひとつうまくないので、欧州の直線競馬に挑ませたのが正解でした」。そう語ったのは森調教師。アグネスワールドは99年、芝1200メートルの北九州短距離Sを1分6秒5という、当時としては驚異的な時計で逃げ切っていた。とはいえ重賞戦線では惜敗も多く、敗因としてコーナーをうまく回れない点が大きいと陣営は考えていた。そこで目をつけたのが、直線で行われるG1。アベイユドロンシャン賞、そしてジュライCという欧州の大舞台に挑戦させた結果、この2つのG1を制覇したというわけだ。日本でのG1勝ちはなかったが、短距離戦なら欧州でも十分に通用すると読んだ陣営の選択は見事に的中したのだった。
ちなみに、ジュライCの前にはロイヤルアスコット開催のキングズスタンドS(英G2、現G1キングチャールズ3世S)にも出走していた。
直線5Fで争われたこのレースでは、2着に惜敗した。「日本みたいにスピードだけで押し切るのは無理。短距離戦でも序盤は折り合いを重視しないと、最後にスタミナが切れてしまう」。そう話したのは、現地でアグネスワールドの調教に騎乗していた松田全史調教助手(現在は新谷功一厩舎)。その後の調教では、遠征に同行していたエアシャカールとドージマムテキの後ろにアグネスワールドを入れて走らせ、折り合いを覚えさせたという。この調整が功を奏し、ジュライC制覇という偉業につながったのだった。 (フリーライター)