【スプリンターズS】ナムラクレア100点!ふっくら充実の腹周り、夏に強い牝馬

2025年9月23日 05:30

ナムラクレア

 ふっくらした腹が暑さに強い牝馬の証だ。鈴木康弘元調教師(81)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。秋のG1シリーズ開幕を告げる第59回スプリンターズSではナムラクレアとサトノレーヴに100点満点を付けた。なかでも達眼が捉えたのは、記録的暑さの影響を全く感じさせないナムラクレアの腹周り。惜敗続きのG1をようやく射止める構えだ。

 牝馬は夏に強いといいます。体の違いからではなく、気性の違いに起因していると私は考えています。個体差はありますが、総じて牝馬は牡馬に比べ気持ちが張っている分、暑さがこたえづらいのでしょう。特に記録的な高温が続いた今夏は暑さに対する耐性の差が馬体にはっきりと表れています。

 例えばナムラクレア。腹周りが細くなった牡馬勢とは対照的にとてもふっくらとした馬体です。今夏滞在した函館も記録的な猛暑に見舞われましたが「牝馬は暑さに負けないのよ」と主張するような腹のボリューム。立ち姿には馬体の張りとともに程良い気持ちの張りもうかがえます。ハミも着けずに凜(りん)としたたたずまい。目、耳、鼻先を左前方の一点に集中しています。同じキャリア22戦の6歳牝馬ママコチャもキリッとした顔つき。腹周りにも張りがありますが、ハミの受け方が強過ぎる。対照的にナムラクレアの立ち姿には気負いが全くありません。

 筋肉のボリュームは100点満点を付けた高松宮記念時と比べても見劣りしません。トモの筋肉が凄い。トモにつながるスネの筋肉はもっと凄い。厚みがある上に血管まで浮き出ています。鍛え抜かれた証です。皮膚がビロードのように薄いためにその鍛錬の証が写真でもはっきりと分かるのです。後肢とともに肩の筋肉も発達しているため前後肢のバランスもとれています。毛ヅヤも良好。ママコチャほどではありませんが、青鹿毛の被毛が輝いています。

 昨年のスプリンターズSの馬体診断では「牝馬とはいえ筋肉のボリュームが欲しい。毛ヅヤももう少し欲しい」と指摘しました。6歳になって本格化を告げた遅咲きの牝馬。あえて注文を付けるなら、もう少し締まった左膝を見せてほしいところですが、レースには影響ないでしょう。

 本番への叩き台に選んだ前走の函館スプリントSは3角で故障馬に進路をふさがれる不利。直線でも進路が狭くなるなど不完全燃焼の一戦でした。記録的猛暑のダメージを感じさせない馬体なら…。G1は2着3回、3着3回。念願のタイトルへ期待が膨らみます。 (NHK解説者)

 ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の81歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長。JRA通算795勝。重賞27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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