【追憶の京王杯2歳S】97年グラスワンダー 躍る四肢、離れる後続 今見ても気持ちいい圧巻の6馬身差

2025年11月5日 06:45

この知的な雰囲気も魅力。調教へと向かうグラスワンダー

 名馬の過去のレースを改めて見るのが好きである。できれば鼻差の大接戦でなく、これでもかと突き放すような競馬。どんどん差が広がっていく時の、あの爽快感。競馬の大きな魅力だ。そんな“圧勝VTRマニア”のあなた(いるのか?)にお薦めしたいのが、97年グラスワンダーが勝った京王杯2歳Sだ。

 グラスワンダーの生涯成績は今さら説明する必要もないだろう。デビュー前、尾形充弘厩舎に強烈なマル外がいる!というウワサは、当時、駆け出しだった筆者の耳にも入るほどだった。

 新馬戦、3馬身差の快勝。2戦目のアイビーS、5馬身差の圧勝。全くモノが違った。

 迎えた京王杯2歳S。当時は「京成杯3歳S」の名称だった。単勝140円。注目はスタートだった。過去2戦、ともに出負けしていた。ゲートの音に毎度、驚いていた。

 ガチャン!ゲートが開く。グラスワンダーは互角のスタートを切った。3番手で折り合い、流れに乗る。過去2戦を経て、学習し、進化していることが分かった。

 4角では2番手。周囲とは手応えが全く違う。満を持して先頭。そして、あっという間に突き放す。フットワークを見てほしい。前脚が他馬とは比較にならないほどに上がる。そして力強く後方へと蹴り出している。これが圧倒的なスピードを生むのだ。今さらながらに感心する。

 6馬身差、余裕たっぷりの圧勝。実に気持ちいい。「注文をつけるところがない。この先もまだまだ伸びて行くはずだよ」。的場均騎手の言葉も軽やかだ。

 尾形充弘師は、勝ってカブトの緒を締めようと、まずは「4コーナー手前で他馬と接触して、馬が怒って行ってしまったな」とコメントした。

 だが、報道陣が馬の強さを称えると、満足げに語った。「デビュー前、4戦目で朝日杯へ、と考えていた。これほど順調にいく馬も珍しい。来年のNHKマイルCまではマイル路線を進み、そこからはもっと長い距離も使っていきたい」

 グラスワンダーは、師のプラン通りに4戦目で朝日杯3歳S(現朝日杯FS)を制覇。その後は山も谷もあったが、有馬記念を連覇するなど、日本競馬をけん引する存在となっていくのだ。

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