テスト中の「パドック映像マルチ配信システム」便利さに驚いた

2025年11月5日 05:27

「パドック映像マルチ配信」のパソコン画面(JRA提供)

 日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」は今週、東京本社の鳥谷越明(56)が担当。グリーンチャンネルWebが2日にテスト運用を実施した画期的な「パドック映像マルチ配信システム」についてリポートする。

 天皇賞・秋が行われた2日の東京競馬場で旧知のグリーンチャンネル職員から声をかけられた。「ぜひ感想を聞かせてほしい」と依頼されたのは、同日にグリーンチャンネルWebでテスト運用が行われた「パドック映像マルチ配信システム」。常識を覆す革新的な技術に衝撃を受けた。

 この新システムは、固定された8Kカメラ2台でパドック全体のライブ映像を撮影し、そこから視聴者が指定した馬の映像をAIがゼッケン番号を認識して抽出、リアルタイムで表示するというもの。解像度の高い高性能カメラとAI映像切り出し技術を組み合わせることで、全く新しいパドック映像の視聴方法を実現させた。

 通常のパドック中継では人間がカメラを操作して1頭ずつ順番に追いかけていく。この新システムでは人間の操作は不要。最初にカメラ2台を設置してシステムをスタートさせてしまえば、あとはAIが利用者の要望に応えてくれる。

 実際に使ってみると、便利さにびっくり。8K映像とあって、パソコンサイズの画面であればAIが抽出して1頭だけ拡大された画像でも、十分に馬の状態は把握できると思う。

 記者はかつて、グリーンチャンネルの競馬中継でパドック解説を長く担当していた。競馬場を訪れてライブ観戦していれば、パドックで気になる馬をチェックできる。自宅やウインズでは、そうはいかない。じっくり見たい馬の順番が過ぎれば、次に回ってくるまで待つしかない。だが、この新システムだと競馬場に行かなくても自分が見たい馬の映像を自ら選択し、自由に好きなだけ見ることができる。

 視聴可能なデバイスはテレビ(アプリ)、パソコン(ブラウザ)、スマートフォン(同)、タブレット(同)。テレビなら最大4頭、ブラウザでは最大5頭の映像を同時に視聴可能。都合に合わせて、いろいろな使い方が選択できる。

 ジャパンC当日の30日にも同様のテスト運用が実施される。視聴するにはグリーンチャンネルWebのマルチ会員になる必要がある(有料)が、パドック派にとっては実に魅力的な新ツールだと思う。なお、19~21日に千葉県の幕張メッセで行われるメディア総合イベント「Inter Bee2025」では、このシステムがアストロデザイン株式会社(技術提供)のブースで展示される。興味がある方は同イベントをチェックしてください。

 ◇鳥谷越 明(とりやこし・あきら)1969年(昭44)7月9日生まれ、群馬県出身の56歳。93年入社。営業部門を経て99年からレース部中央競馬担当。02年から19年まで17年間、東京本社予想を担当。20年からレース部長を務め、今年10月に中央競馬担当に復帰した。

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