【追憶のエリザベス女王杯】02年ファインモーション ゴーサインへの反応を武豊騎手はあの名馬に例えた
2025年11月12日 06:45 秋華賞を含む5戦5勝。完璧な成績を引っ提げての参戦とはいえ、ファインモーションの最終単勝オッズは1.2倍。3頭のオークス馬(シルクプリマドンナ、レディパステル、スマイルトゥモロー)が勢ぞろいしながら、このようなオッズになることが、ファンのファインモーションへの信頼と期待を表していた。
レースぶりもパーフェクトだった。8枠12番と枠は外だったが、互角のスタートからスッと2番手へ。1コーナー過ぎでは、外から位置を上げたトーワトレジャーを前に入れる余裕まで見せた。
道中は淡々と進んだが、いきなりギアを上げたのは坂を下りきっての4角だ。瞬時にスピードが上がってトーワトレジャーをパス。逃げたユウキャラットもかわして、あっという間に先頭。もう迫れるだけのスピードを持つ馬は後続にはいなかった。
力強く芝を叩く前脚。パワフルなかき込み。大きな完歩。今見てもホレボレする。2馬身半差のゴール。着差以上に余裕のある完勝だった。
無敗での古馬G1制覇は、これが初めて。まさに歴史を塗り替えたわけだが、伊藤雄二師は「ホッとしている。今回はだいぶ仕上げたので引っ掛かる可能性もありましたから」と重圧があったことを吐露した。
安心して見ていられたのでは?という質問にも「安心というより、信じていた、という言葉の方が正しいでしょう」と正直に語った。
武豊騎手は晴れやかな表情で、なじみの記者にこう語った。「スーパーホースの誕生だね」
勝負のポイントは4角での積極的な押し上げだった。武豊騎手はうなずき、「一瞬で相手をちぎってしまったね。乗っていた僕も驚いた。“ギューン”という音がしたか、というくらいの反応だったよ」と明かした。
過去の名馬との比較は好まない武豊騎手だが、ファインモーションが見せた瞬時の反応を珍しくあるスーパーホースに例えた。「クロフネですね。ゴーサインを受けてからの反応が異次元。周りの馬は“おいおい、そんなのアリかよ?”って思っているでしょう」
感動を覚えるようなレースを体験した時ほど、ジョークでけむに巻きたくなるのが、関西人気質の武豊騎手。インタビューで「牝馬という感じがしない。何か付いてるんじゃないの?」。大観衆はドッと笑いに包まれ、拍手が起こった。
