3冠への期待、14連敗…復活勝利直後に天へ旅立ったマティリアル

2026年3月13日 05:20

87年、スプリングSを制したマティリアル(手前)

 【競馬人生劇場・平松さとし】今週末、中山競馬場ではスプリングS(G2)が行われる。クラシック3冠の第1弾、皐月賞(G1)へ向けた前哨戦であり、3冠馬ナリタブライアンや、後にG1を7勝するキタサンブラックなど、歴代の勝ち馬には名馬の名が並ぶ。

 まだ昭和だった1987年、このレースを制したのがマティリアルだ。馬主の和田共弘氏(故人)は、シンボリ牧場のオーナーとしても知られる昭和を代表するホースマン。多くの持ち馬には牡馬なら「シンボリ」、牝馬なら「スイート」の冠名を付けたが、マティリアルには「素晴らしい素材」と感じ、あえて冠を付けなかったという。

 86年デビューのマティリアルは当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだった岡部幸雄騎手を背に新馬勝ち。その後、自己条件も制し3戦2勝でスプリングSへ駒を進めた。レースは12頭立て。最後方から進めると、岡部騎手の策がはまる。中盤に11秒台のラップが続き、最後は12秒3―12秒6―12秒7の持久力勝負。岡部騎手に導かれたマティリアルは、中山の短い直線を豪快に追い込み優勝した。勝利騎手インタビューで岡部騎手は「ミスターシービーしちゃった」と、4年前に追い込み3冠を成し遂げた名馬の名をあげ、パートナーの走りを称えた。

 だが、本番の皐月賞と日本ダービー(G1)では、ともに1番人気に支持されながら3、18着。その後は勝利から遠ざかり、岡部騎手の手も離れてしまった。

 再び岡部騎手が手綱を取ったのは約2年後、平成元年9月の京王杯オータムハンデキャップ(G3)。その間14連敗を喫していたマティリアルだが、名手との久々のタッグで見事、復活の勝利を挙げるのだった。

 しかし、その雄姿はこれが最後となってしまう。1着で入線後に故障を発症し、マティリアルはそのまま天へと旅立ったのだ。

 スプリングSの季節が来るたび、昭和から平成へと移ろう時代を駆け抜けた、あの個性派の姿が思い出される。(フリーライター)

特集

2026年3月13日のニュース