【追憶の阪神大賞典】91年メジロマックイーン オグリ引退後の“不安”を一掃 新時代のヒーロー誕生
2026年3月18日 06:45 メジロマックイーンが2着ゴーサインに1馬身4分の1差をつけてゴールを駆け抜けた瞬間、さまざまな感情が湧き上がった。ウインズ後楽園でモニターを見上げながら、当時どんな思いを抱いたのか、35年の時を経て言語化してみたい。
前年暮れの有馬記念。オグリキャップが奇跡の復活を遂げ、大フィーバーを巻き起こしてターフを去った。
オグリキャップと幾度も激闘を繰り広げたイナリワンも90年をもって引退。武豊騎手とのコンビで盤石の強さを発揮したスーパークリークも故障により、90年京都大賞典1着を最後に現役生活を退いていた。
つまり91年は、オグリキャップを中心にしのぎを削った3頭がまとめていなくなって迎えた競馬となったのだ。
筆者は漠然とした不安感を抱いていた。それまではG1を迎えるたびにワクワクして気持ちは盛り上がった。スターホースをごっそり失った今、あの感情、ときめきは戻ってくるのだろうか…。
“G1やクラシックが始まってしまえば、なんだかんだで盛り上がるんだよ”という意見は、世界レベルのスターホースを何頭も抱える今の日本競馬に慣れたファンの見方である。
当時は中央競馬の“戦力”にそこまでの安定感はなかった。野球に例えるなら、この先しばらくは“一軍半もしくは二軍”同士の戦いを見ることになるのかもしれない。そんな不安を抱いていた。
では次代を託すべきスター候補はどの馬なのか。メジロマックイーンがその筆頭であることは間違いなかった。
90年菊花賞馬。ホワイトストーン、メジロライアンを完封したその脚は“遅れてきた大物”感にあふれていた。
兄メジロデュレンも菊花賞馬であり、有馬記念馬。父はメジロティターンで“メジロの執念”というべき血統背景も魅力的だった。
何より、この阪神大賞典から武豊騎手とペアを組むという。菊花賞を制した内田浩一騎手には申し訳ないが、新コンビ発表にグッと気持ちが高まったことは確かだった。
メジロマックイーンは、そんな期待に最高の形で応えてみせた。この年の阪神大賞典は中京での開催。9頭立て。メジロマックイーンには先々への期待値込みなのか、単勝1.2倍のオッズがついた。
盤石の勝ちっぷりだった。道中は6番手付近。武豊騎手との息はぴったりで完璧に折り合った。
一気に流れが速くなった残り800メートル付近。南井克巳騎手騎乗・ゴーサインの仕掛けを苦もなく追走した。直線を向く。残り150メートルでメジロマックイーンが先頭。四肢のしなやかな動き。完歩の大きさがゴーサインとは全く違うことがモニター越しにも分かった。
1馬身4分の1差の勝利。だが、着差以上の強さを感じさせた。当分はメジロマックイーンの時代で間違いない。ウインズ後楽園にはそんな空気が漂っていた。
「実力通りですよ」。武豊騎手の一言目は意外にそっけなかった。「初めての左回りでモタついていた。もっとピリッとしてくるはずです」。ただ勝っただけでは喜ばない。武豊騎手の期待の大きさをうかがわせた。
そして、こんな言葉を付け加えた。「これで追われる立場になった。イナリワン、スーパークリークと比べると、まだまだ子供。だけど成長力でカバーすればいいんだから」。名を挙げた名馬2頭と同じ領域まで行けることを示唆した。
メジロマックイーン時代の到来を予告した一戦。この芦毛馬はこれからどんなワクワクをくれるのだろう。不安はいつの間にか大きな期待へと変わっていた。
