【NHKマイルC】ダイヤモンドノット急成長 スライド大の「寝肩」東京コースにぴったり
2026年5月5日 05:30 3歳マイル王の座を射止めるのは尾花栗毛の貴公子だ。鈴木康弘元調教師(82)がG1有力候補の馬体ベスト5をセレクトする「達眼」。「第31回NHKマイルC」(10日、東京)ではダイヤモンドノット、エコロアルバ、アスクイキゴミ、カヴァレリッツォ、ロデオドライブをピックアップした。なかでも達眼が捉えたのはダイヤモンドノットの輝く尾花栗毛。尾花(ススキの穂)のような急成長を遂げた本命候補だ。
府中の杜は武蔵野台地の南端に位置し、秋になると黄金色の尾花に包まれます。その美しさに心打たれた江戸中期の俳人・池西言水(ごんすい)がこんな名句を詠みました。
武蔵野や 鑓持もどく 初尾花
鑓(やり)を構えていた者も圧倒されるほど武蔵野の初尾花(初秋の尾花)は見事だとの意味。
尾がススキの穂(尾花)のように見えることから「尾花栗毛」と呼ばれる被毛の競走馬は秋を待たずに輝きます。昭和の尾花栗毛といえば、劇作家・寺山修司が「史上もっとも美しい馬」と記したメイズイ(63年ダービー)。ゴールドシチー(86年阪神3歳S)、サッカーボーイ(88年マイルCS)、トウショウファルコ(92年AJC杯)、タイキシャトル(98年・年度代表馬)、最近ではジャックドール(23年大阪杯)…。いずれも尾、たてがみ、前髪を黄金色に輝かせた貴公子然とした名馬でした。「玉結び」(英語でダイヤモンドノット)と命名された尾花栗毛の3歳牡馬も貴公子列伝に名を連ねる玉のような美しさ。春の柔らかい日差しを受けて、全身から黄金色の光沢を放っています。
尾花は成長が非常に早いイネ科の多年草。春に新芽を出し、秋には草丈2メートルにも達します。この尾花栗毛ダイヤモンドノットの成長力も凄い。昨年の朝日杯FS(2着)時の馬体診断では「筋肉にはパワーをつける余地があります。腹周りももう少しふっくらしてほしい」と注文をつけました。それからわずか4カ月の間に下腹が太く見えるほどたくましくなった。トモと肩から胸前にかけての筋肉も厚みを増しています。実が入ってきた体つきです。
ビロードのように薄い皮膚。肩から上腕、前腕、さらに股からスネにかけて血管がうっすらと浮かび上がっています。鍛え抜いた証です。典型的なマイラー体形。背中と腹下が詰まり気味で、各部位のつながりに遊びがない、ガチッとした骨格のつくり。筋肉の付き方もマイル仕様です。「寝肩」といって肩甲骨はなだらかに傾斜しています。こういう肩の持ち主はストライドが大きい。両前肢が肩先の延長線上まで伸びるからです。東京コースにぴったり合うでしょう。
悠然と風に尾花を揺らす古馬のような立ち姿。とても賢そうな顔つきでハミを上手に受けています。目、耳、鼻先も前方の一点に集中しています。
冒頭の池西言水の名句を競馬風にもじると…。
武蔵野や 鞭持もどく 春尾花
鞭(ムチ)を構えていた者(騎手)も圧倒されるほど春の尾花栗毛は武蔵野(府中の杜)で輝きを増すことでしょう。(NHK解説者)
◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の82歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長。JRA通算795勝。重賞27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。
