【スプリンターズS】キャリア20年の平野厩務員 ワールズエンドで「G1勝った景色見たい」
2026年9月24日 05:30 日々トレセンや競馬場など現場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」は栗東取材班の田村達人(33)が担当。「第60回スプリンターズS」で担当馬ワールズエンドを送り込む平野健一厩務員(47)は栗東トレセンでのキャリア20年を誇る。かつて手がけた重賞勝ち馬ヴィクティファルス、プラダリアが届かなかったG1タイトル獲得を目指す。
これまで培った経験を全てG1舞台にぶつける。スプリンターズSに挑むワールズエンドを担当している平野厩務員はキャリア20年目を迎えた。「この世界に入って、まだG1を勝っていない。ぜいたくな願いですが、勝った景色を見てみたい」と思いを明かした。
祖父、父が同じトレセン勤務で馬と身近な環境で育った“トレっ子”。小学校の同級生に騎手の池添謙一、太宰啓介がいる。「騎手の他にも、これまでG1馬に携わった同級生がたくさんいて、自分も“もっと頑張ろう”と刺激をもらっている。毎日のように職場で小学校の仲間と顔を合わせるので、少し特殊な環境だと思います」と笑顔で語る。
最初に所属した森秀厩舎で14年経験を積んだ。池添厩舎に移る、きっかけのひとつになったのがケガ。「椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄(きょうさく)症で仕事ができない時期があった。不安もあったけど、妻と結婚して、まだ子供も小さかったので」とケガと向き合いながら、後遺症のしびれは今も残っている。「残りの仕事ができる期間を考えた時に(森秀厩舎の)担当馬を持たないプール制(厩舎全員で全馬を見る)より、自分の担当馬を持つスタイルでやりたい」と今の厩舎へ。「牧場時代から交流があった(森秀)先生の下で、経験したことは今に生きている」と頭を下げる。
これまで重賞勝ち馬2頭を担当。ヴィクティファルスは池添謙一&池添学師の兄弟タッグで重賞初制覇を飾った21年スプリングSが思い出。「やっぱり同級生の(池添)謙くんと獲った重賞が本当にうれしかった」とかみしめながら「コロナ禍で口取りがなかったのが寂しかった」と振り返る。
もう一頭のプラダリアは22年青葉賞、23年京都大賞典、24年京都記念とG2・3勝。現在、功労馬として余生を過ごしているYogiboヴェルサイユリゾートファーム(北海道日高町)に来月、訪れるとのこと。「ひと言で優等生。ダービー(5着)に連れて行ってもらった時は堂々としていて、G1の空気に緊張している自分に対して、“しっかりしろ”と背中を押してもらったような感覚でした。いろいろ学ばせてもらった」と感謝を伝える。
その2頭が届かなかったG1タイトルにワールズエンドが挑む。前々走の京王杯SCで重賞初制覇を飾り、自信を持って送り出した前走の安田記念は惜しくも首差で同着2着。その後は休養を挟み、約4カ月ぶりの実戦になる。「夏休みを元気に過ごして帰ってきた。追い切り本数を重ね、着実に上昇している」と好仕上がりをアピール。初の芝6Fでも父ロードカナロアで適性は高そうだ。「この距離のスペシャリストと対決。簡単ではないけど、対応できるスピードはあると思うし、楽しみです」と期待を膨らませた。愛馬の可能性を信じて、ギリギリまで最善を尽くす。
◇平野 健一(ひらの・けんいち)1979年(昭54)8月20日生まれ、滋賀県出身の47歳。小学5年生から乗馬を始め、中学校ではバスケットボール部、栗東高校では馬術部で青春時代を過ごし、卒業後は社台ファームの山元トレーニングセンター、グリーンウッドで馬乗りを学んだ。厩舎経歴は森秀厩舎→池添厩舎。主な担当馬はG2・3勝プラダリア、21年スプリングSの勝ち馬ヴィクティファルス。「愛情を込めて、馬に接する」がモットー。趣味は庭いじり。
