【根本康広 我が道番外編】武豊くんは人格も技術も最高 日本の競馬を大きく発展

2026年10月13日 07:00

武豊騎手は競馬界の顔です。ディープインパクトで05年皐月賞を制覇

 半世紀近い騎手、調教師人生で本当に多くの騎手を見てきました。番外編の今回は私が「凄い!!」と思った騎手5選を紹介します。

 1人目はマイク・ベネツィアという米国出身の騎手。74年に外国人として初めて短期での日本騎乗が認められた騎手です。今みたいにすぐ動画が手に入る時代ではありません。ケンタッキーダービーの結果は2カ月後に届き、外国人騎手の乗り方は写真から想像したものです。だからこそベネツィアの騎乗を生で見た時は衝撃でした。私はまだ下乗り時代でしたが、全ての所作が日本人騎手とは違うんです。ビシッと馬を制御して、それが格好良かった。当時は海外の騎手から学ぶことばかり。日本で乗った名手たちのおかげで日本人騎手のレベルアップが進みました。

 私より先輩の騎手になりますが、徳吉一己さんは決して五輪で金メダルを獲るような奇麗なうまさではないんです。一癖も二癖もあって勝負事の中で輝くうまさ。レースで自分より前にトクさんが騎乗している馬がいたら嫌でしたね。横のスペースに入ろうとすると(馬の)ケツをスッと入れてくるんです。あくまで妨害にならない範囲でのけん制です。駆け引き、相手を翻弄(ほんろう)する技術。少し力のない馬を走らせるのが抜群に上手でした。

 身近で見続けて思わず「うまい」と言葉に出してしまうのは柴田善臣くんでした。彼はバタバタしている馬がギュインと走り出す時でも、スッと合わせちゃうんですよね。限りなくスムーズに重心を移動させることができます。シンプルに馬乗りの技術が高い。調教師として騎乗をお願いすると、仲がいいから「もう、うるさい馬は嫌だよ」と言うのですが、クセ馬に乗せれば右に出る騎手はいませんでしたね。

 岩田望来くんはデビュー前から光るものがありました。以前、JRAと地全協(地方競馬全国協会)の騎手候補生が集まる合宿があり、縁あって私も足を運びました。多くの生徒がいる中、一人だけ抜群に鞍ハマりがいい子がいた。思わず教官に名前を聞いたら、それが岩田望来くんでした。父はJRA騎手の岩田康誠くんで、これが生まれ持ったセンスなのかと感心しましたね。近年の活躍(先日のスプリンターズSを優勝)も全く不思議ではありません。

 最後は当然、武豊くん。歌舞伎界のプリンスのようなデビューでした。お父さんは“ターフの魔術師”と称された武邦彦さん。彼が受けたプレッシャーは私には計り知れません。最初は身長の高い騎乗フォームがどうなのかという声もあったが、一つ一つの重圧を乗り越えるたびに成長し、完成していったのでしょう。人格的にも技術的にも競馬界の顔としてこれ以上の人物はいません。ハイセイコー、武豊、オグリキャップの存在が、日本の競馬を大きく発展させてくれました。
 
 ◇根本 康広(ねもと・やすひろ)1956年(昭31)1月31日生まれ、東京都出身の70歳。77年3月に騎手デビュー。87年日本ダービー(メリーナイス)などG13勝を含め重賞14勝。障害戦でも活躍し、79年にはバローネターフで中山大障害を春秋連覇。JRA通算2633戦235勝。97年に騎手を引退し調教師に転身。98年に開業し通算6420戦218勝。藤田菜七子元騎手ら5人の弟子を育てる。

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