【京成杯AH】フロート我慢の鼻差で重賞初V!
2010年9月13日 06:00 秋の中山開幕を告げる「第55回京成杯オータムハンデ」が12日、中山競馬場で行われ、4番人気ファイアーフロートがキョウエイストームの猛追を鼻差しのいで重賞初制覇。津村明秀騎手(24)は、2月の落馬負傷を乗り越え、約1年8カ月ぶりの重賞V。管理する小笠倫弘師(39)は、開業5年目でJRA重賞初Vとなった。
【レース結果
】
残り100メートル。直線入り口で先頭に立ち、必死に粘り込むファイアーフロートを、外から馬体を併せたキョウエイストームが、1完歩ごとに追い詰める。火花が散るような叩き合い。内のファイアーに、ストームの白い馬体がぴったり重なったところがゴール。勢いは完全に外。スロー再生でも、白い馬体が差し切ったように見えたが…。
10分近くに及んだ写真判定の末、検量室の着順を示すホワイトボードの1着欄に書き込まれたのは「7」。鼻先をわずかに突き出したファイアーの根性が勝っていた。ゴール前が何度も映し出されるモニターを、食い入るように見つめていた津村。その瞬間、「よかったー」と拳を突き上げ、ホッとした表情を見せた。「残っていると思ったが、相手も勢いがあった。よく我慢してくれた。大きな鼻差です」
鞍上にとっても待望の重賞Vだ。今年2月20日の東京5Rで落馬し首の骨(第2頸椎=けいつい)を骨折。首から下を固定され、体を動かせない寝たきりの生活が1カ月続いた。騎手生命を脅かす重傷だったが、不屈の闘志とリハビリで、7月の福島開催から戦列復帰。「戻ってきてからも、いい馬に乗せてもらっているし、結果を出せてよかった」。09年スポニチ賞京都金杯をタマモサポートで制して以来のタイトルは完全復活の証。ファイアーフロートも右ひざ骨折を克服しての初重賞。人馬ともに悪夢を乗り越えて、大きな勲章をつかんだ。
小笠師は米国出張中で歓喜のゴールに立ち会うことはできなかったが、代わって表彰台に立った八月朔日(ほぞみ)助手は「最後はかわされたと思ったが、本当によかった」と笑顔。東大卒の理論派トレーナーが鍛え上げた「稲妻」(馬名の意味)が秋の大舞台でも光を放つ。
◆ファイアーフロート 父スペシャルウィーク 母バーニングウッド(母の父タバスコキャット)牡4歳 美浦・小笠倫弘厩舎所属 馬主・臼田浩義氏 生産者・北海道安平町ノーザンファーム 戦績12戦6勝 総獲得賞金1億1289万円。