【スプリンターズS】進撃の女神ビーナス神ってる!上がり重点

2018年9月27日 05:30

<スプリンターズステークス追い切り>キタイ(左)と併せ追い切るナックビーナス(撮影・郡司 修)

 一度かかった魔法は簡単に解けない。“マジックマン”の異名を取るモレイラを背にした前走キーンランドCで重賞初Vを飾ったナックビーナスは、昔のわがまま娘ではない。最終追い切りは真面目で従順な気性に様変わりしていた。

 前日までの雨を含んだWコースでキタイ(2歳500万)と併せ馬。半馬身追走から直線で並びかけると馬なりの手応えで併入に持ち込んだ。ラスト1Fは12秒3。集中力を研ぎ澄まし軽快な脚さばきで駆け抜けた。見届けた杉浦師は「1週前に体も息も出来上がっていたから。最終追いは上がり重点」と満足顔で意図を説明する。続けて「いつもは気を抜かないようにしても抜いちゃうのに、気持ちを抜かず最後まで真剣に走っていた。体的には春当時よりボリューム感が増して完成してきた」。レースも稽古も“本気度”を欠く性格だったが、モレイラとの運命の出合いがビーナスを本気にさせた。

 初タッグを組んだキーンランドC。好発から前半通過33秒7のやや速い流れでレースを引っ張ると、最終コーナーを回っても余力十分。2着に2馬身半差をつけて逃げ切った。デビュー以来、最大の着差をつけた名手の巧腕に杉浦師も驚きを隠せない。「あれだけの着差をつけたことがなかった。馬の癖が全て分かって乗っていたはずではないのに。あれがジョッキーの腕なのか」と感嘆する。ゴール線を駆け抜けると1コーナーでピタッと止まる悪癖も、モレイラを背にした前走は2コーナーまで駆け抜けた。マジックマンの魔法にかかったビーナスは闘争本能を取り戻し、人馬とも初の重賞Vを手にした。

 中山は得意舞台。芝1200メートルは2勝、2着4回、連対率100%だ。鞍上は初コースだが、そこは今夏札幌で31勝(2着8回)を挙げ連対率5割を超える百戦錬磨のトップ騎手。トレーナーも不安視していない。「前走は逃げ切ったが、ゲートの出方や枠順もあるからジョッキーの判断に任せる。馬の能力を100%出し切ってくれれば」と全幅の信頼を寄せている。

 「雷神」とも呼ばれるモレイラと女神が手を組む“神コンビ”。G1制覇は人馬にとっての悲願。秋のG1シーズンは新スプリント王誕生で幕を開ける。

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2018年9月27日のニュース