【桜花賞】無敗タクト 大外から差した!“史上初”3戦3勝で歴史的「桜冠」

2020年4月13日 05:30

大外から差し切り無敗で桜花賞を制したデアリングタクト(中央)(撮影・亀井 直樹)

 仰天の桜の女王誕生だ。牝馬クラシック第1戦「第80回桜花賞」が12日、雨、重馬場の阪神競馬場で無観客のもと行われ、2番人気デアリングタクトが力強く差し切り勝ち。3戦3勝での桜花賞制覇は2歳戦が実施されるようになった1946年以降、史上初の快挙となった。松山弘平(30)は6度目の挑戦で桜花賞初制覇。杉山晴紀師(38)はグレード制導入の84年以降史上初の30代桜花賞制覇がクラシック初勝利に。昨年の2歳女王、1番人気レシステンシアは最後に勝ち馬に捉えられ2着に終わった。

 衝撃の新女王誕生劇だった。4コーナーは12番手。残り300メートルでレシステンシアが先頭に立った時、デアリングタクトは8馬身は後方にいた。だが、そこから一歩ずつ差を詰めた。たっぷりと水を吸った坂がスタミナを奪う。さすがに疲れかけたその時、手前(軸脚)を替えた。体が沈み込む。もうひと伸び。残り30メートル。ついに先頭だ。最後は1馬身半差、完勝。上がり3Fはただ1頭、36秒台(36秒6)。松山は“1冠だ”とばかりに人さし指を立て、左腕を力強く2度振り下ろした。

 「前とは離れていたが、この馬の末脚なら届くと信じていた。無我夢中で追った。馬が応えてくれた。強い競馬だった」。泥だらけの松山が胸を張った。デビュー3戦目での桜花賞制覇は2歳戦実施の1946年以降、3頭目で最少キャリアタイ。先輩2頭は共に黒星を喫しており、3戦無敗での桜の女王は46年以降、史上初の快挙だ。

 「他馬を気にせず馬のリズムを重視した。デビューから凄い脚を使っていたが、さらに磨きがかかっている。成長しているし改めて強い馬だと思った」。その松山も土曜の阪神牝馬S(サウンドキアラ)に続く重賞連勝。今年すでに重賞6勝の大暴れだ。30歳を迎え、レース中も周囲がよく見えている。最後まで馬をしっかり追って関係者からの信頼も急上昇中だ。温和で控えめ。それだけに派手なガッツポーズが喜びの大きさを表していた。

 杉山晴師は「スタートに集中してくれ」と松山に伝えていた。過去2戦とも出遅れていないが中間はゲート練習。ゲートでおとなしくすることを教えていた効果で気負いがスッと消えた。これが抜群の折り合いにつながった。「ゲートを五分に出てホッとした。道悪馬場がどう出るか心配したが、自分の競馬に徹したことが良かった。最後は頑張ってくれと思っていた」(同師)

 38歳の若き指揮官。30代での桜制覇は史上初だ。18年JBCクラシック(ケイティブレイブ)に次ぐJRA・G1・2勝目。落ち着いた口調、理詰めの頭脳派だが、今年2月のフェブラリーSでは当時、今年まだ0勝だった長岡禎仁をケイティブレイブに乗せ、2着をつかむなど大胆な人情派の一面も持つ。今後については「桜を目標にやってきたので馬の状態を見てからオーナーと相談して決めたい」。オークス(5月24日、東京)に向かうのか、それとも…。いずれにしても歴史に残る名牝が雨の仁川に誕生した。

 ◇デアリングタクト 父エピファネイア 母デアリングバード(母の父キングカメハメハ)牝3歳 栗東・杉山晴紀厩舎所属 馬主・ノルマンディーサラブレッドレーシング 生産者・北海道日高町の長谷川牧場 戦績3戦3勝 総獲得賞金1億5737万5000円。

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