【スプリンターズS】エイティーンガール 飯田祐師にG1初制覇を!1100万円落札馬が“下克上”狙う
2020年10月2日 05:30 エイティーンガール(牝4)の飯田祐史師(45)は騎手時代を通じて初のG1制覇に挑む。同レースの枠順は2日に決まる。
調教師の喜びは原石の中に宝石の輝きを見つけ、磨き上げることにある。エイティーンガールは飯田祐師が見初め、磨き上げた宝石だ。
出身は18年のJRAブリーズアップセール。1100万円(税抜き)の廉価で取り引きされている。師が当時を振り返る。
「セリの前に日高に下見に行った時から“ちっちゃいけど素軽そうな馬だな”と。僕の好きなタイプの馬でしたね」
父ヨハネスブルグ。祖母にオークスTRを勝ったセンターライジングの名前が目につくぐらい。良血馬が大レースを独占する現在ではどうしても見劣る。
2歳9月に3戦目で未勝利を勝ち上がり、年明けの若菜賞で2勝目。重賞のフィリーズR(9着)、葵S(6着)で結果は出せなかったが、目を引く成長を見せたのが3歳秋の復帰戦だった。
「ひと夏越してサイズが大きくなった。体が立派になって帰ってきても、素軽さは変わらなかった」
2勝クラスを池添の手綱で快勝。続く3勝クラスで首差2着。切れ味に磨きがかかった。気性が勝ったヨハネスブルグ産駒に折り合いと差す競馬を覚えさせ“早熟”と言われる血統面は、段階を踏ませることで成長を促した。
「青写真通り?それ以上ですよ。こうなったらいいな…とこっちが思う以上にうまくいってくれた」
昨年暮れのファイナルSで4勝目を挙げた時は、鞍上の武豊から「重賞を勝っていい脚」のお墨付きをもらい、年明けのシルクロードSで2着。賞金的には高松宮記念への出走も可能だったが、見送りの決断を下している。
「まだ早いと僕の一存でやめてもらったんです。馬主さんは間髪入れず“全て任せる”とおっしゃってくださいました」
先代から勝負服を受け継いだオーナーの中山泰志氏にとって最初の所有馬。誰でも早く晴れ舞台を踏ませたいと願う。が、優先したのはあくまで馬の将来。今夏のキーンランドCで初重賞に輝き、前哨戦覇者として胸を張ってG1に向かえるのも春の辛抱と深謀遠慮があってこそだ。
師にとって平地G1は父から引き継いだメイショウマンボで挑んだ16年エリザベス女王杯(12着)以来。
「結果が出せなかった。G1どころか重賞も勝たせられなかった調教師ですから」と自らを卑下するが、艱難(かんなん)辛苦の経験が今につながった。
「相手は強いがこの馬の競馬ができれば」。指揮官は自然体だ。デビュー戦で422キロだったきゃしゃな馬体は前走456キロまで成長。今ならどんな馬が相手でも見劣らない。彼女が本当の輝きを放つのはG1の大舞台かもしれない。
◆飯田 祐史(いいだ・ゆうじ)1974年(昭49)11月18日生まれ、滋賀県出身の45歳。93年3月、父・飯田明弘厩舎から騎手デビュー。00年大阪杯(メイショウオウドウ)など重賞4勝。13年2月引退。JRA通算5954戦380勝。翌14年に厩舎開業。JRA通算1498戦99勝(9月27日終了現在)。19年小倉サマージャンプ(メイショウダッサイ)、20年キーンランドC(エイティーンガール)でJRA重賞2勝。