【ジャパンC】アーモンドアイ 有終9冠で“伝説”に!無敗3冠馬2頭との「世紀の一戦」制し最強証明

2020年11月30日 05:30

ジャパンカップを制し9冠を達成したルメール騎乗のアーモンドアイ(中央)。 前列左端は2着で福永騎乗のコントレイル、同右端は3着となった松山騎乗のデアリングタクト(撮影・西川祐介)

 日本競馬史上初めて3冠馬3頭が激突した世紀の一戦「第40回ジャパンC」は29日、東京競馬場で行われ、ラストランの最強牝馬アーモンドアイ(牝5=国枝)が有終の美を飾った。自身が持つ記録を更新する芝G1・9勝目。総獲得賞金は19億1526万3900円となり、キタサンブラックを超え歴代最多となった。2着に3歳牡馬3冠コントレイル(矢作)、3着に3歳牝馬3冠デアリングタクト(杉山晴)が入り、3冠馬3頭での決着。1→2→3番人気の順で3連複、3連単はG1史上最も低い配当となった。コロナ禍の日本。競馬ファンだけでなく多くの国民の注目を集めて社会現象となった今年のジャパンC。勝馬投票券の売得金は同レース今世紀最高を記録した。

 どこからでもかかってこい!!残り150メートル。白いシャドーロールを揺らし、アーモンドアイが堂々と先頭に立つ。後輩3冠馬2頭にその強さを誇示するよう、先んじて飛び出した。コントレイル、デアリングタクトがその影すら踏めない圧倒的な走り。馬上でルメールも感動していた。「凄い。後ろからは何も聞こえなかった」。最強牝馬は最強のままターフを去った。

 キセキが前半5F57秒9の大逃げ。百戦錬磨の人馬は奇策に惑わず、2番手集団から横綱競馬に徹した。「逃げ馬が速いペースをつくった。一番強い馬が勝つ流れ」。センス、スタミナ、瞬発力の全てが問われる、最強馬決定戦にふさわしい展開になった。先団をキープしたまま、抜群の手応えで直線へ。馬群から抜け出し、100メートル近くリードを保っていたキセキをあっという間に抜き去ると、あとは独走。中団から懸命に差を詰める3歳2頭は2着争いが精いっぱい。格が違った。

 「アーモンドのさよならパーティーをエンジョイした。今日のパフォーマンスが彼女のピークだったかも」

 天皇賞・秋で号泣したルメールに涙はない。「今日は泣かない。彼女の物語はまだ終わっていないから悲しくない。たぶん、また子供に乗れるから応援して」。愛馬を笑顔で次のステージへ送り出した。

 管理する国枝師は、名牝の首筋をいとおしそうに撫でて「本当によく頑張った」としんみり。天皇賞・秋の死闘から中3週の厳しいローテーション。ぎりぎりまで状態を見極め、参戦表明は3冠馬3頭の中で最後だった。

 「いい結果がベストだけど、“無事に走り終えてくれれば”というのが本音だった」

 指揮官の懸念をよそに、50年後、いや競馬が存続する限り語り継がれるであろう世紀の一戦を制した最強牝馬。「我々はいろいろ心配するけど、それを乗り越えてしまう馬。本当に凄いんだ。いろんな夢をもらったよ」

 コロナ下で行われた特別な一戦を制し、史上最多芝G1・9勝、総獲得賞金は歴代最多19億1526万3900円。輝かしい記録だけでなく記憶にも残る名牝は、この日、伝説になった。

 ◆アーモンドアイ 父ロードカナロア 母フサイチパンドラ(母の父サンデーサイレンス)15年3月10日生まれ 牝5歳 美浦・国枝厩舎所属 馬主・シルクレーシング 生産者・北海道安平町のノーザンファーム 戦績15戦11勝(うち海外1戦1勝) 総獲得賞金19億1526万3900円 重賞10勝目 馬名の由来は美人とされる顔の目の形。

 ▼後藤正幸日本中央競馬会理事長 きっと後に世紀の一戦と呼ばれるに違いない、素晴らしいレースとなりました。これは無観客競馬が続いた間もファンの皆さまが競馬を楽しみ、応援し続けてくださったからこそと感謝しております。

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