新調教師が3月1日に開業 四位師の“感謝される”厩舎づくり応援

2021年3月12日 05:30

 【競馬人生劇場・平松さとし】2月末日をもって多くの調教師が引退。入れ替わって、新調教師が3月1日に開業をした。

 引退した調教師のほとんどが70歳の定年によるものだったが、ただ一人、定年を待たずに勇退したのが栗東・角居勝彦調教師だ。まだ56歳にもかかわらず、実家の都合により競馬場を去ることになった彼の残した実績はあまりに大きい。シーザリオによる米国の芝でのG1制覇やデルタブルースとポップロックでは南半球最大のレース・メルボルンC(G1)でのワンツーフィニッシュ。ヴィクトワールピサでは日本馬として現時点で唯一無二のドバイワールドC(G1)制覇など、世界を舞台に活躍したが、国内での偉業としていの一番に挙げられるのはやはりウオッカによる日本ダービー(G1)優勝だ。2007年のそれは実に牝馬による64年ぶりのダービー制覇であった。

 この時、手綱を取っていたのが四位洋文騎手(当時)。レース後、次のように語っていた。

 「ウオッカの父のタニノギムレットはダービーを勝つような実力馬だったのに、僕は皐月賞で乗せてもらい負けてしまいました(3着)。にもかかわらずウオッカの手綱を任せてくださり、谷水(雄三)オーナーには感謝しかありません」

 そして、さらに続けて言った。

 「僕がウオッカにまたがるのは競馬の何分間かだけ。普段は角居厩舎のスタッフが調教をつけてくださっています。ウオッカが牝馬にもかかわらずダービーという大舞台で牡馬を蹴散らして勝てたのは、角居厩舎のスタッフが普段からこの馬に向き合ってくださっているから。彼らの努力の賜物(たまもの)なんです。だから角居先生や厩舎の皆さまへも感謝しかありません」

 翌年にはディープスカイによりダービー連覇の偉業を達成した彼だが、昨年、騎手を引退。まるで角居師からバトンを受け取るようにこの3月に開業すると、先週の7日、早くも初勝利を挙げた。今後は騎手からも“感謝される”側の厩舎をつくり、活躍できるよう、応援したい。(フリーライター)

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