【ダービー】4番人気シャフリヤール優勝 福永騎手「紙一重」史上初4年で3勝 史上3人目の連覇

2021年5月31日 05:30

ハナ差で日本ダービーを制した福永はシャフリヤールの鞍上で歓喜のガッツポーズ

 30日に東京競馬場で行われた「第88回ダービー」は芝2400メートル2分22秒5、レースレコードの死闘となり、10センチ差で福永祐一(44)騎乗の4番人気シャフリヤールが優勝。3年前に生を受けたサラブレッド7398頭の頂点に輝いた。福永は武豊(98、99年)、四位洋文(07、08年)に次ぐ史上3人目となるダービー連覇。次世代のホープ横山武史(22)が騎乗した無敗の皐月賞馬エフフォーリアは鼻差及ばず初黒星を喫した。

 44歳と22歳。同じ2世騎手ながら、片や自らを「晩成」と評する福永祐一、片や飛ぶ鳥を落とす勢いで無敗皐月賞馬を駆る横山武史。先に抜け出す武史エフフォーリア、内から差し込む祐一シャフリヤール。ゴールの瞬間だけシャフリヤールの鼻先が前に出ていた。2400メートルを走り、約10センチ差の激闘だった。

 「競馬の神様がどちらにほほ笑むかという紙一重の勝負だった」

 レース後、福永はこう振り返った。福永の経験が神様を振り向かせた。一つは18年ワグネリアン、20年コントレイルでダービーを勝った栄光の記憶。「3年前に初めて勝てた時の自信と経験が今日に反映された」と言う。もう一つはかつての苦い敗戦。98年、21歳で2番人気キングヘイローと挑んだ初めてのダービーは14着惨敗。13年エピファネイアでは、あと一歩の2着で涙をのんだ。98年の勝ち馬はスペシャルウィーク、13年はキズナ。いずれも鞍上は武豊。大きな壁にはね返され、その後の精進があり、今がある。

 そして今回、22歳・横山武&エピファネイア産駒エフフォーリアに立ちはだかったのが4年でダービー3勝と超一流の座を揺るぎないものにした福永。優勝会見で「レース中はすぐ後ろで彼らを見ていた。彼は22歳という若さでとんでもない大きな重圧の中で素晴らしい騎乗をして、王者にふさわしいレースをした」と語った。

 2着馬の騎手を称える一方、自身の騎乗には「いい騎乗ができたとは思わない」と厳しい。向正面でペースが落ち、押し込められてポジションは11番手。直線外に進路を求めたが不発で、馬場中央から抜け出すエフフォーリアを見つけ、真後ろから猛追。「負担をかけるレースになった」と眉をひそめた。

 残り200メートルで進路が開く。「普通なら勝つのは困難な位置だったが、素晴らしい瞬発力を見せて、これなら!と思った」。ここぞのタイミングを見極め「“冷静と情熱のあいだ”で馬のバランスを崩さないように追った」。爆発力を引き出すエスコートが名手の妙技。85年加藤和宏シリウスシンボリ以来、36年ぶりダービー乗り替わりVとなった。

 自身の騎乗には辛口だったが、勝ったシャフリヤールについて聞かれると「肌感覚で(騎乗したダービー馬)2頭のような手応えがあった。デビュー前からここを最大目標にしていた馬。騎手冥利(みょうり)に尽きる」と笑みがこぼれた。

 ≪98年VTR≫当時21歳の福永は戦後のダービー最年少騎手V記録を懸けて皐月賞2着、2番人気キングヘイローでダービー初騎乗。逃げ候補セイウンスカイが行かず、福永キングヘイローがハナへ。4コーナーから手応えがなく14着大敗。「誰かが行かなかった場合は行ってもいいかなと思っていた」とレース後に語ったが、完敗だった。

 ≪13年VTR≫36歳になった福永は皐月賞2着、3番人気エピファネイアで14度目のダービー。行きたがるのを中団で懸命になだめたものの、キズナの強襲に差されて半馬身差2着。「馬にとっても自分自身も勝ちたかった。あと少しだったが…。あり余る闘志をうまくコントロールできなかった。僕が至らなかった」と肩を落とした。

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