馬の熱中症を防げ JRAの「暑熱対策」に迫る 効果抜群ミスト機能充実で発症頭数抑制

2022年8月3日 05:30

新潟のパドックでミストを浴びながら周回する出走馬

 夏競馬の馬券につながる情報や旬なトピックを独自の視点で掘り下げる「夏ラボ」。いよいよ夏本番を迎え、暑さに弱い競走馬にとって気温の上昇は大きな問題となって立ちはだかる。今回は「馬の熱中症」に関する現状、そして17年からJRAが力を入れる「暑熱対策」にスポットを当てた。

 史上最速の梅雨明けとなった今年の夏。日に日に太陽の日差しは強くなり、競走馬にとってつらい時季がやってきた。夏は函館&札幌の北海道での開催もあるが、福島、新潟、小倉など、本州での競馬も毎週行われる。気温の上がる日中に全力で疾走することによる「馬の熱中症」は、全てのホースマンにとって大きな悩みだ。JRAが17年から本腰を入れる「暑熱対策」の現状について聞いた。

 「トレセンにおける調教時間は比較的涼しい早朝ですが、開催日の出走時刻は気温の上昇する日中であること、運動強度は調教より競走の方が大きいこと等の背景により、競走馬の熱中症はトレセン在厩時よりは、開催日により多く認められます」とJRA。レース当日の馬を守るため、さまざまな対策を拡充してきた。主な例は以下の通り。

 (1)障害競走を原則1Rに
 (2)下見所周回時間・装鞍所滞在時間の短縮
 (3)開催日割の調整
 (4)装鞍所=運動場への幅広の屋根と強力ミストおよびサンシェードの設置
 (5)パドック=周回エリアへの強力ミストの設置
 (6)退避所・屋根に強力ミストを設置
 (7)検量室前~厩舎エリア=歩くシャワーの設置

 目を引くのはミスト機能の拡充だ。競馬場に訪れたファンの方なら目にしたことがあるかもしれないが、レース後、厩務員に引かれた馬がシャワーの中を歩いている。厩務員の服はずぶぬれになっていて、かなりの水を浴びていることが分かる。馬房を出てからレースを終えるまでの間に何度も体温を冷やすことにより、熱中症を予防していることが分かる。

 また、以前は公正確保のために禁止されていたレース前の飲水も現在は解禁(くみ置き水は除く)。人間と同様、運動後は速やかな電解質の補給も推奨されている。それらの対策の効果もあって、JRAは「年初から6月末までの開催日における熱中症発症頭数は過去5年で10~20頭です。本年6月は暑さが厳しい日が続きましたが、本年6月末までの開催日の熱中症発症頭数は過去5年の発症頭数を上回ることはありませんでした」と説明。競走馬の熱中症発症頭数は増加傾向にあったが、対策を強化した17年以降はほぼ横ばいとなっている。

 いよいよ8月に突入。6月から始まった気温上昇も本格化してくる。JRAが本腰を入れる熱中症対策により、安全に熱いレースが行われることを祈る。

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