【ジャパンC】ヴェラアズール G1初挑戦初Vの快挙 ムーア「前が空いた時に“勝った”と実感」

2022年11月28日 05:30

<ジャパンC>馬群を割って突き抜けるヴェラアズール(右から2頭目)(撮影・西川祐介)

 ジャパン・ブルーが混戦に断を下した。競馬の祭典「第42回ジャパンC」が27日、東京競馬場で行われ、3番人気ヴェラアズール(牡5=渡辺)がG1初挑戦初Vの快挙を達成。ライアン・ムーア(39=英国)は19年朝日杯FS(サリオス)以来のJRA・G19勝目。管理する渡辺薫彦師(47)は厩舎開業7年目でうれしいG1初制覇。父エイシンフラッシュにとっても産駒の初G1タイトル。青毛馬のジャパンC制覇も初めてとなった。

 直線残り400メートル。ヴェラアズールとムーアは密集した馬群の中でもがいていた。手応えは抜群。でも進路がない。「狭くて何度も行き場を失った。さすがに心配した」(ムーア)。だが百戦錬磨の名手。焦らず時を待った。残り200メートル。外から一気に前に出たダノンベルーガの内に空いた隙間を逃さない。一瞬で馬体をねじ込み、ベルーガを抜き去る。さらに内を伸びたヴェルトライゼンデを振り切った。最後は外から襲いかかったシャフリヤールと一騎打ち。馬体をぶつけ合う激しい追い比べでダービー馬を競り落とした。

 「馬が優秀だった。馬群を縫って上手に走り、トラブルを避けてくれた。前が空いた時に“勝った”と実感できた。ホッとしたよ。この馬に乗れたことを幸運に思う」。好判断と高い技術が導いた金星。それでもムーアは、いつものポーカーフェースで相棒に手柄を譲り、称えた。

 19年朝日杯FSをサリオスで制した直後から始まった新型コロナのパンデミック。ムーアは20年の来日を見送り、昨年もJC週のみのスポット参戦。本格的な日本での騎乗は3年ぶり。「ここは僕にとって特別な国。この地に戻ってG1を勝てたことをうれしく思う」と笑った。

 渡辺師は開業7年目でG1初勝利。「4角を手応え良く回ったので前さえ空けば必ず伸びると信じていた。調教師冥利(みょうり)に尽きます」としみじみ。直線の攻防については「正直よく覚えていない。気がついたら立ち上がって興奮していました」と照れ笑いを浮かべた。騎手時代はナリタトップロードの主戦としてターフを沸かせた。東京は99年ダービー2着、01年JC3着と惜敗した舞台。無念を晴らす快勝だったが「騎手と調教師ではやるべき仕事が違いすぎる。うれしいですが、そこは意識していなかった」。トレーナーとしての矜持(きょうじ)をにじませた。

 デビューは3歳3月。「骨折などもあって体質が弱く、育成する時期に満足に乗り込めなかった。芝向きとは思っていたが脚元への負担も考え、ずっとダートで使ってきた」と指揮官は振り返る。実戦を重ね徐々に体質も強化。5歳を迎えた今年3月、満を持しての芝挑戦。そこから6戦4勝の快進撃で一気に芝の頂点へと上り詰めた。「いつも僕らの想像を超えてくる。本当に偉い馬です」。父エイシンフラッシュが4年連続で挑戦して届かなかった栄冠。その無念をまとめて晴らすサクセスストーリーでもあった。

 今後について師は「馬の状態次第」と慎重だが「もっと強くなると思います」と将来を見据える。いずれは海外も視野に入るはず。馬名はスペイン語で「青い帆」。青毛馬のJC制覇は長い歴史でも初だ。ジャパン・ブルーによる府中の歓喜となった。

 ヴェラアズール 父エイシンフラッシュ 母ヴェラブランカ(母の父クロフネ)17年1月19日生まれ 牡5歳 栗東・渡辺厩舎所属 馬主・キャロットファーム 生産者・北海道白老町の社台コーポレーション白老ファーム 戦績22戦6勝(重賞2勝目) 総獲得賞金5億4968万円 馬名の由来はスペイン語で青い帆、母名(白い帆)より連想

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