【有馬記念】塩崎利雄氏 ソツないルメールきっちり差す
2022年12月23日 12:00 ▼万札を束で投げだし、束で受け取る鉄火の勝負。「第67回有馬記念」(25日、中山)の枠順が確定した。今年のダービーで115万円をものにした競馬評論家の塩崎利雄氏(78)は「つくづく年を感じる」と嘆きながらも、馬券の張り方は眼光鋭き極道記者と称された頃そのままの激しさ。有馬は(9)イクイノックスの鬼脚で勝負だ。同レースの馬券はきょう23日午後6時30分からインターネットで前売り発売される。
今年を象徴する漢字は「戦」だった。
京都の名刹(めいさつ)、清水寺の貫主による揮毫(きごう)である。確かに2月に勃発したロシアの侵攻によるウクライナとの戦争。その影響によるさまざまな物価高との戦い。いまだ収束しない3年越しのコロナとの戦い。カタールでのサッカーW杯もスポーツではあるが、国の名誉と威信を賭けた戦いでもあった。
ナルホドねとうなずいたもんだ。
今年に限ったことではないが、広義に解釈すれば競馬も競走馬の戦いであり、馬券も買うファンにとっては、取った取られたの戦いだろう。
50年以上、馬券を買っているが、儲(もう)けた話はあまりしないことにしている。
「よかったじゃん…」
聞かされた相手は一応、祝福はするものの、内心では「チェッ!」てなもんだから、である。そう書いている直後に自慢めいた話で頭ポリポリだが、本紙に依頼された今年のダービー予想で武豊のドウデュースを軸マルチで3連単を的中。1万5770円を5000円。イクイノックスとの馬連730円を5万円、運良く取らせてもらった。ダノンベルーガへの馬連10万円は余計だったが、45万買っての115万余円。「どんなもんでぇ…」と大威張りする戦果ではないが、ホッとしたのは間違いない。そのご褒美ということか、有馬記念でも紙面を汚すことになった。“許されよ”である。
話は変わるが、先週の水曜日。夕刊紙・東京スポーツに頼まれ、懐かしい男と対談した。
田原成貴である。
もう40年近い付き合いで、少し空白の時もあったが、12年前の菊花賞があった晩に、京都・丸太町の寿司(すし)割烹(かっぽう)「式部」で呑(の)んで以来の再会だった。
サマ爺(じい)になって涙腺が緩くなってきたこちとら。思わず涙ぐんでしまった。
今週月曜日の発行だったか。41年ぶりに古巣の「東スポ」に載ったことになる。それにしてもカメラは嘘(うそ)をつかない。「栗東の玉三郎」と言われた成貴は還暦を過ぎたはずなのに、若々しく男前だったが、こっちはもうちょっと映りのいい写真がなかったのかヨーと文句を言いたくなるほど爺さんで、つくづく年を感じさせられたネ。
それはさておきだ。
有馬記念にいこう。
ファン投票ダントツのタイトルホルダーをどうみるかが最大のポイントになる。
4番人気だった去年の有馬は5着止まり。同期のエフフォーリアの影も踏めなかったが、今年になって覚醒。日経賞、天皇賞・春、宝塚記念と3連勝。特に凄かったのが2着のディープボンドを1秒1、7馬身もぶっちぎって勝った天皇賞・春は圧巻だった。
そのタイトルホルダーにしても凱旋門賞は2秒4もちぎられた11着。馬場が合わなかったと言えばそれまでだが、少なからずダメージは残ったとみるべきだろう。
「何が何でも…」の同型パンサラッサ不在で、逃げるそぶりをするのは戸崎圭太のブレークアップぐらい。
タイトルホルダー独り旅の圧勝シーンとなったらゴメンナサイだが、それ以上に魅力があるのがルメールのイクイノックスだ。
ゴール前200メートル。誰しもが、このまま逃げ切るのではないかと思われたパンサラッサをアッサリかわした“鬼脚”は見事の一語。
コース的にはコーナーが6つある中山の2500メートルより府中向きなのは間違いないが、皐月賞でジオグリフの2着。道中、5、6番手の好位キープから4コーナーは3番手。しかも、大外18番枠からのもので、ある程度促せば中団より前へ行ける器用さもあるとみた。
そこは機を見るに敏なソツないルメール。はるか前方のタイトルホルダーを視野に入れて、きっちり差すのでは…。
3連単はイクイノックスの1頭軸マルチでいく。
相手はもちろんタイトルホルダーだが、ファン投票2位のエフフォーリアには、怖くないと言ったら嘘になるが、まるで“気”がない。
3歳時の去年はダービーの鼻差負け2着以外、パーフェクトな競馬で、去年の有馬も制している。それが今年になって大阪杯9着。宝塚記念6着と、これが同じ馬なのかと疑われるほど、だらしなかった。そして気になるのが宝塚記念でブリンカーを着用して“走る気”を起こさせざるを得なかったことだ。
燃え尽きたとまでは言わないが、“消し”の1頭だと思う。
勘繰りになるが、JRA作成の有馬記念のCMで、1位と3位のタイトルホルダーとイクイノックスが走っているのに、2位のエフフォーリアがおらず、7位のジェラルディーナなのが“暗示”と言う知人もいる。
そのジェラルディーナに、松山弘平のヴェラアズール。そして来年2月末にムチを置く福永祐一のボルドグフーシュも買おう。
この相手4頭36点に1万円。イクイノックスとタイトルホルダーの馬連に10万円。
ちちんぷいぷい。買っていない馬は消えておくれ、とお祈りをしてから、それこそ、清水の舞台から飛び降りるつもりで、取られるとチト痛い46万円を張る。
◇塩崎 利雄(しおざき・としお)1944年(昭19)5月29日生まれ、東京都出身の78歳。東京スポーツを皮切りに競馬専門紙を含め57年の予想歴を誇るベテラン競馬評論家。東京競馬記者クラブ会友。スポニチには01~02年に予想コラム「鉄火場慕情」を執筆。主な著書は極道記者シリーズなど。記者時代は計7億円賭けたと言われている。