【ホープフルS】伏兵ドゥラエレーデ大金星!ムルザバエフが日本G1初制覇の大仕事

2022年12月29日 05:30

<ホープフルS>レースを制したB・ムルザバエフ騎乗のドゥラエレーデ(右手前) (撮影・西川祐介)

 22年の中央競馬を締めくくる2歳G1「第39回ホープフルS」が28日に中山競馬場で行われ、14番人気の伏兵ドゥラエレーデが、逃げ粘るトップナイフを2番手から鼻差で差し切ってG1初制覇。単勝9060円、3連単246万6010円の大波乱を演出した。短期免許で来日中のドイツのリーディング騎手、バウルジャン・ムルザバエフ(30)は日本のG1初制覇、管理する池添学師(42)もうれしいG1初制覇となった。

 肉眼ではトップナイフが逃げ切ったように見えた。だがゴール前のスローVTRが流れると、場内からは悲鳴とも歓声とも取れる絶叫が響いた。ゴール板を通り過ぎる一瞬だけ、カザフスタン出身の剛腕ジョッキーがドゥラエレーデを鼻差先着させていた。ムルザバエフは「ゴールした瞬間は分からなかった。引き揚げてきた時に厩舎の人に“勝っている”と言われて初めて分かった」と本人も驚きを隠さなかった。

 4年連続ドイツのリーディング騎手に君臨しているムルザバエフは、レース前に2つのプランを用意していた。「プランAは逃げ馬を前に置いて2、3番手から。プランBは逃げることも考えていた」と明かした。内からトップナイフがハナを主張したことでプランAが成立。思い通りの展開で、あっさり日本のG1を勝ってしまった。今年のジャパンCでテュネス(9着)に騎乗するために初来日。今月17日からは短期免許で騎乗、JRA・G1は今回が2回目の騎乗だった。「ルメールに“僕は日本のG1を勝つのに3年かかった。なのに君は2週間だね”って言われて、そんなに凄いことをしたんだと改めて思ったよ」と笑った。

 開業8年目の池添学師にとっては、ドゥラエレーデがのべ34頭目の出走でG1初勝利。「人気がなかったし信じられない。“追えるジョッキー”という印象だったので依頼した。スタミナはある馬なので、折り合いに気をつけてリズムを崩さず乗ってほしいと。ゴールしてしばらくは、2着ならよく頑張ったと思っていたら…。夢のようです」と素直に喜んでいた。

 ドゥラエレーデには調教にまたがって「好感触を得ていた」というムルザバエフ。今後の同馬の可能性について問われると「切れる脚はないけどパワフル。距離が延びても問題ないと思う。もし日本ダービーに乗るチャンスがあったら、うれしいね」とにっこり。日本のファンに衝撃を残したムルザバエフ。来春の大舞台でもその姿が見られるかもしれない。

 《ノーザンF3連覇で将来性に太鼓判》ノーザンファームは20年ダノンザキッド、21年キラーアビリティに続いて生産馬がホープフルS3連覇。有馬記念に続き、今年のJRA・G1・12勝目を飾った。中島文彦GMは「当歳から体に伸びがあっていい馬だった。最後は首の上げ下げだったが、凄いレースだった。まだ薄手なところがあるので、これから筋肉がついてくれば、さらに良くなる」と将来性に太鼓判を押した。母マルケッサの産駒は1歳が父ロードカナロア、当歳がドゥラメンテの牝馬。現在はシルバーステートを受胎中。

 《スリーエイチレーシング2歳G1連勝》馬主のスリーエイチレーシングは朝日杯FSのドルチェモアに続き、2歳G1を連勝の快挙。橋本征道オーナーは「偶然が重なり合って奇跡のようです」と大喜び。「セレクトセール(21年1歳セリで1億円)の下見で購入を決めて期待していた馬。厩舎がしっかりケアして、いい状態で出走できたのが大きかった。今後はクラシックを目指していくが、レース選択などは厩舎の判断を踏まえてになる」と話した。

 ◆ドゥラエレーデ 父ドゥラメンテ 母マルケッサ(母の父オルフェーヴル)20年1月29日生まれ 牡2歳 栗東・池添学厩舎所属 馬主・スリーエイチレーシング 生産者・北海道安平町のノーザンファーム 戦績5戦2勝(重賞初勝利) 総獲得賞金8497万4000円 馬名の由来は父名+最高の後継者(イタリア語)。

 ◇バウルジャン・ムルザバエフ 1992年9月17日生まれ、カザフスタン出身の30歳。07年カザフスタン見習騎手免許取得、16年ドイツ騎手免許取得。19~22年ドイツリーディング騎手。主なG1勝ち鞍は22年ドイツダービー、バイエルン大賞。1メートル69、54キロ。今年のジャパンCでテュネス(9着)に騎乗するため来日し、前日(11月26日)に日本初騎乗。短期免許で12月17日から日本で騎乗。JRA通算33戦5勝。

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