南井師 充実の調教師人生「思い残すことない」 騎手課程から歩んだ55年
2023年2月24日 05:30 【さらば伯楽】騎手としてJRA通算1527勝、調教師としてJRA通算446勝を挙げた南井克巳師(70)が最終週に大攻勢をかけている。
南井師は通る声でテキパキと調教の指示を与える。騎手としてJRA通算1527勝を挙げた名手。軽い身のこなしは現役時代と何ら変わりない。70歳だが、今でも軽々と馬に乗れそうだ。
阪急杯に向かうメイショウケイメイの最終追いは冷たい雨の中。これが最後の重賞挑戦になる。泉谷(レースは角田河)を背に重馬場の坂路を活気十分に駆け上がって4F53秒8~1F12秒2。泉谷は「状態は良さそうですよ。1回使ったことで上向いている。1400メートルの条件も合う。一瞬の脚をどこで使うかですね」と好感触を伝えた。
ラストウイークとあって、あちこちから「南井先生、お疲れさま」の声がかかる。手を振って笑顔で応えるが、どこかしんみり。
「ここ(トレセン)に来られないことが一番、寂しい。朝、みんなといろいろなことをしゃべったり。調教師としては思い残すことのない人生だった。自分は(馬に)乗ることしかできない人間だったからね。頑張ってくれた従業員。みんなのおかげで、ここまでやって来られた」
99年の免許取得、翌年の開業から重賞13勝を含むJRA通算446勝を積み上げてきた。「いい時も悪い時もない、滑らかな平均的な調教師人生だった」と謙虚に笑った。
「馬事公苑(長期騎手課程)からだと55年。騎手になってから53年。ファンの声援があって、ここまでやって来られた。阪急杯のメイショウケイメイには自分の競馬をしてもらうだけ。前走(北九州短距離S=コンマ3秒差11着)もそんなに負けていないだろ?いい結果で終わりたい。最後まで声援をよろしくお願いします」
ファンに感謝を伝え、深く頭を下げた。伝説のファイターも古希を迎えたが、身にまとうオーラは騎手時代と変わらない。芦毛の怪物タマモクロスにオグリキャップ、無双を誇ったナリタブライアン。数々の名勝負が鮮烈な記憶として、よみがえる。ファンが熱狂した「闘魂」は次世代が受け継ぐことになる。さあ最終週。ファイター南井の最後の戦いを見届けよう。
《14頭の大攻勢》最終週の南井厩舎は阪急杯のメイショウケイメイを筆頭に阪神、小倉の2場に14頭使いの大攻勢。指揮官が「思い入れの強い血統」と話すのが阪神土曜12Rに起用するタマモダイジョッキ。母チャームポットは同厩舎で5勝し、オープン入りを果たした。母の兄がスワンS、シルクロードSと重賞2勝のタマモホットプレイ、母の弟がきさらぎ賞を勝ったタマモベストプレイ。厩舎の活躍を支えた血統だ。
◇南井 克巳(みない・かつみ)1953年(昭28)1月17日生まれの70歳。京都市で生まれ、4歳から愛知県刈谷市で育つ。騎手としてJRA通算1万3120戦1527勝。うち重賞77勝でGIはタマモクロスの88年天皇賞・春、宝塚記念、天皇賞・秋、オグリキャップの89年マイルCS、ナリタブライアンの94年3冠制覇など16勝。99年に調教師免許を取得、翌年3月に開業した。JRA通算5903戦446勝、うち重賞はウイングアローの00年ジャパンCダートを含む13勝。