“体できてから初陣”ブレなかった藤沢元調教師

2023年6月9日 05:00

21年のマイルCSで連覇を果たすグランアレグリア(撮影・亀井 直樹)

 【競馬人生劇場・平松さとし】ダービーが終わり、先週からは早くも2歳の新馬戦が始まった。ひと昔前は、「あまり早い時期にデビューさせてもダービー、オークスの頃まで持たない」といった風潮が強く、俗に言う“良い馬”は秋以降にデビューする傾向が強かった。

 そんな考えの急先鋒(せんぽう)と言われたのが藤沢和雄元調教師だ。現役時代の藤沢師は「若い馬は体ができていません。しっかりしてから走らせてあげないと、クラシックだなんだと人間が焦って早くデビューさせれば、それだけ競走馬寿命は短くなってしまいます」と語り、実際にゆっくりデビューさせるケースが多かった。03年にデビュー勝ちを飾ったレディブロンドにいたっては初出走は5歳になってからだった。

 しかし、時代とともに伯楽の使い方も変わっていった。18年6月3日、東京競馬場の新馬戦に送り込んだのはグランアレグリア。1番人気に推されると、秋には阪神ジュベナイルF(G1)を勝つダノンファンタジーに2馬身の差をつけ、ゆうゆう先頭でゴールイン。この年の2歳新馬戦が始まった最初の週に早くもデビュー勝ちを記録してみせると、その後のグランアレグリアの活躍は皆さんご存じの通り。3歳となった翌年は桜花賞(G1)を勝ち、4歳となった20年にはアーモンドアイを撃破した安田記念(G1)などG1を3勝、さらに5歳となった21年にもヴィクトリアマイル(G1)を勝利すると、最後はマイルチャンピオンシップ(G1)連覇を置き土産に繁殖へ上がることになった。

 遅いデビューにこだわっていた藤沢師に、どのようなマインドの変化があったのか。その時の名調教師の返答は次のようだった。

 「預かる馬の数が増えたり、育成牧場が進化したりで、早い時期にデビューでき得る馬が増えただけ。しっかりしてから走らせるという考えに何も変わりはないし、逆に言えば昔だって好きこのんで遅くデビューさせていたわけではありませんよ」

 さて、今週は函館、東京、阪神で計6鞍の新馬戦が行われる。どんな馬がデビューするのか、注目したい。 (フリーライター)

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