【スプリンターズS】ナムラクレア95点 秋の主役 残暑のダメージ感じさせないふくよかさ

2023年9月26日 05:30

ナムラクレア

 天高く“腹”肥ゆる秋のヒロインだ。鈴木康弘元調教師(79)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。秋のG1開幕戦「第57回スプリンターズS」(10月1日、中山)ではナムラクレアをトップ評価とした。達眼が捉えたのは記録的な猛暑のダメージを感じさせないふっくら肥えた腹周り。達眼先生から残暑見舞い代わりの馬体解説をお届けする。

 残暑ひときわ身にこたえるこの頃ですが、今日は彼岸明け。暑さ寒さも彼岸まで…といわれるように記録的な暑さも少しは落ち着くでしょう。月間カレンダーを1枚めくれば、天高く馬肥ゆる秋のG1シーズン到来。そんな暦に合わせるようにふっくら肥ゆる体つきになっているのがナムラクレアです。丸みを帯びたトモ(後肢)、ふくよかな腹周り。牝馬にとって何よりも重要なふっくらさを保っています。

 残暑の中で調整のピッチを上げて迎える大一番。スプリンターズSの馬体診断で最も重視したのは夏のダメージの有無です。夏負けは体に表れる。有力馬の数頭にも見られるように腹周りが細くなってしまいます。残暑ひときわ身にこたえるこの頃…残暑見舞いの常とう句は競走馬にもそのまま当てはまりますが、ナムラクレアのふっくら肥えた腹周りは残暑がこたえていないことを雄弁に語っている。目と同様、腹も口ほどに物を言うのです。

 統計史上最高気温(36・3度)を記録し、臨時休校が相次いだ8月下旬の札幌でキーンランドC優勝。その後は栗東トレセンに帰厩して調教を重ねてきたそうですが、その成果は四肢に表れています。上腕から前腕にかけて(前肢)とスネ(後肢)にうっすらと血管が浮いています。これまでの馬体写真には見られなかった。薄い皮膚を持つ馬が鍛え込まれると、こういう血管が写るのです。

 ヴィクトリアマイル時に比べて姿勢も良くなりました。今春は頭を低くした立ち姿でしたが、今回はしっかり頭を起こし、胸を張って立っている。姿勢は精神を表すといいます。ナムラクレアは安定した精神状態を保っているのでしょう。全身が程よい緊張感に包まれています。夏場に1度使われたせいか、目つきは少しきつくなっていますが、尾は気持ち良さそうに流している。余裕のある立ち姿からも夏のダメージは感じられません。

 天高く馬肥ゆる秋のG1開幕戦。その主役を演じられる馬体です。 (NHK解説者)

 ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の79歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~2004年に日本調教師会会長。JRA通算795勝。重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなどで27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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