【菊花賞】遅れてきた大物 ドゥレッツァ 破竹の5連勝で重賞初挑戦V

2023年10月23日 05:30

<菊花賞>最後の直線で抜け出し、菊花賞を制したルメール騎乗のドゥレッツァ(手前)(撮影・椎名 航)

 牡馬クラシック最終戦「第84回菊花賞」が22日、京都競馬場で行われ、春2冠不出走だった4番人気ドゥレッツァ(牡=尾関)が5連勝でラスト1冠を奪取。クリストフ・ルメール(44)の手綱に導かれ、2着にダービー馬タスティエーラ、3着に皐月賞馬ソールオリエンスを従え堂々、押し切った。関東馬によるワンツースリー独占は85年以来38年ぶり。関東馬の3冠全勝は87年以来36年ぶり。重賞初挑戦での菊花賞制覇は90年メジロマックイーン以来33年ぶりの快挙となった。

 誰が予想しただろうか。1周目のゴール板を先頭で走るドゥレッツァの姿を――。2周目、後続との差を広げ先頭でゴールを駆け抜けた相棒の首筋をルメールが何度もなでる。「びっくりさせてゴメンね!!」。ハイタッチで出迎えた尾関師に対し、思わず口をついた“謝罪”の言葉は鞍上の本心。菊3勝目となった名手は「いい仕事ができた」と汗をぬぐった。

 当初のプランは「静かに乗る」。しかし、ドゥレッツァの状態が良過ぎた。前進気勢たっぷりのスタートに、ルメールは即座にプラン変更を決断。「元気いっぱいだった。3000メートルを逃げるのはリスクがあるけど、自信を持って行った」。淀名物、3角の下り坂は“1周目は折り合い重視”がセオリー。桃色の帽子が加速していく姿に、大観衆はどよめいた。「逃げたことがないから馬もびっくりしていた。前に誰もいないから物見してしまって。でも、それで冷静になった」。

 向正面で3番手まで位置を下げる。“2周目は勢いをつけて”の下り坂に入っても、手綱は抑えられたまま。「手応えが良かったので我慢させた」と、またもセオリーに逆らう。馬群の外に進路を求めざるを得なかった皐月賞馬、ダービー馬を尻目に内ラチ沿いをぴったり回る。残り200メートルで先頭に立つと独走。「直線はパワフルストライド。最後はテンションが上がってしまった」。2着タスティエーラに影すら踏ませぬ3馬身半差。名手も思わず雄たけびをあげる、常識外れの圧勝劇だった。

 スルーセブンシーズの凱旋門賞4着健闘で世界を驚かせたばかりのキャロットファーム×尾関師×ルメールのトリオ。セオリー無視のマジックに指揮官も驚きを隠せない。「パドックでルメールさんに“静かな感じとアグレッシブな乗り方、どっち?”と聞かれ、“お任せします”という会話の中で何となく静かな方の雰囲気になったが…」と苦笑い。師にとっては同じく大外枠だったグローリーヴェイズ(18年5着)の雪辱を果たすクラシック初制覇。「まだ実感は湧いていない。実は担当者がケガをして、中間は代打のスタッフが一生懸命頑張ってくれた」と厩舎一丸での勝利を喜んだ。

 これで破竹の5連勝。選択肢を広げる意味で香港国際競走には予備登録済みだが次走は未定。尾関師が「長距離はもちろん、チャンピオンディスタンスも走れる馬」と展望すれば、ルメールも「2000メートル以上ならG1レベル」と断言した。3冠牝馬誕生の余韻冷めやらぬ淀に2週連続でもたらされた衝撃。ドゥラメンテが残した怪物はリバティアイランドだけじゃない。 

 ドゥレッツァ 父ドゥラメンテ 母モアザンセイクリッド(母の父モアザンレディ)20年4月24日生まれ 牡3歳 美浦・尾関厩舎所属 馬主・キャロットファーム 生産者・北海道安平町のノーザンファーム 戦績6戦5勝(重賞初勝利) 総獲得賞金2億7927万1000円 馬名は激しさ、厳しさ(音楽用語)、父名より連想。

 ≪ノーザンファームJRAG1で8連勝≫生産牧場のノーザンファームはヴィクトリアマイル(ソングライン)からJRA・G18連勝。菊花賞は19年ワールドプレミア以来となる8勝目。中島文彦ゼネラルマネジャーは「丁寧に使ってきて、まだまだ成長中。(父の)ドゥラメンテは3歳6冠のうち4勝ですから本当に凄い」とにっこり。母モアザンセイクリッドは昨年から始まったミックスセールに上場され、豪州で牧場を展開するザァン・ヨェション氏が落札。中島GMは「今年はあさって(24日)ですから」と同ファームが主催するセリ市のアピールを忘れなかった。

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