砂の最高峰 27年の時を経て日本馬の強さ証明を
2023年11月3日 05:28 今週末、現地時間3、4日にアメリカのサンタアニタパーク競馬場でブリーダーズカップ(以下、BC)が行われる。
アメリカの競馬場を持ち回りで行われる大イベントだが、過去に一度だけアメリカ以外で行われた年がある。96年のBCはカナダのウッドバイン競馬場を舞台に開催されたのだ。
そして、その年、太平洋とアメリカ大陸をも飛び越えて、これに挑戦した日本馬がいた。
タイキブリザードだ。
藤沢和雄調教師(引退)の管理馬で、翌97年、安田記念を制してG1ホースとなる同馬だが、この時点ではG1未勝利馬。それでも果敢に、ブリーダーズCの中でも最も賞金が多く、格も高いBCクラシック(G1)に挑んだ。しかし、結果は13頭立ての13着。先頭でゴールに飛び込んだアルファベットスープからはるか後方に置かれ、全身砂まみれ。ほうほうのていでのゴールとなった。
「目や鼻、口の中まで、洗っても洗っても砂が出てきます」
同馬を担当する手島正勝厩務員は、レース後そう語った。また、すっかり暗く、そして寒くなった検疫厩舎の前で日本から来た報道陣に囲まれた藤沢師は、絞り出すようにして、次のように言った。
「遠かったですね。カナダも遠かったけど、ゴールも遠かった。また一からやり直します」
あれから27年の時が過ぎ、日本馬は世界中で称賛されるほど強くなった。しかし、世界に出て勝っているのはその多くが芝の中距離以下のレース。ヨーロッパの2400メートル戦でG1を勝ったのはいまだにエルコンドルパサーただ一頭しかいないし、北米のダートの王者決定戦と言われる2000メートルのG1を制した馬はまだいない。今年のBCクラシックにはウシュバテソーロとデルマソトガケが出走を予定している。タイキブリザードの頃と違い、有力視される存在となった日本馬が本当に強くなったと確信できるシーンが見られることを願い、現地で応援したい。 (フリーライター・平松 さとし)