08年秋華賞プロヴィナージュ出走の波紋

2024年10月11日 05:05

08年秋華賞を制したブラックエンブレム(左)と3着のプロヴィナージュ(奥)

 【競馬人生劇場・平松さとし】13日に京都では秋華賞が行われる。3歳牝馬の3冠、掉尾(とうび)を飾るこのレース。事件が起きたのは08年のことだった。

 この年、美浦・小島茂之調教師は2頭をここに送り込んだ。1頭はオークス4着だったブラックエンブレム。そのオークス以来、秋初戦となったローズSでは18頭立ての15着。勝ち馬から2秒1も離された大敗に小首をかしげた小島茂師だが「こんなに走らない馬ではない」という思いを胸に、秋華賞に駒を進めた。

 そして“事件”となったのはもう1頭の出走馬プロヴィナージュだ。同馬はここまで8戦して、いずれも牝馬限定の未勝利戦と500万下条件(現1勝クラス)を勝ったのみ。その2勝はともにダート戦。芝は1戦(ラジオNIKKEI賞9着)だけ。直前のシリウスSは16頭立てのシンガリ16着に負けていた。しかし…。

 「秋華賞を前にして凄く調子が良くなっていたので使うことにしました」

 これが思わぬ波紋を呼んだ。同馬が急きょ出走したことでポルトフィーノが除外になった。こちらは名牝エアグルーヴの子という良血で鞍上は武豊騎手。思わぬ馬が出走してきたため人気馬が除外となり、場外が荒れに荒れたのだ。

 しかし、その騒音は本番の秋華賞でかき消されることになる。先行したプロヴィナージュが直線で一度は抜け出し、粘りに粘った。

 「“頑張れ!!”と声が出ました」と小島茂師。最後は力尽きて3着に敗れるのだが、決して“記念出走”ではないことの分かるパフォーマンスと結果に、非難の声は急速に沈下した。

 ちなみに「粘れ!!」という小島茂師の願いを打ち砕き、優勝したのはもう1頭の出走馬ブラックエンブレム。大敗の前走から変わり身を見せ、調教師に初のG1タイトルを届けた。

 そして、この遠征時、一緒に栗東入りしていたのがクィーンスプマンテ。こちらはその経験を生かし翌09年にエリザベス女王杯を制すのだが、これはまた別のお話。機会があればまた記そう。 (フリーライター)

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