【菊花賞】メイショウタバル90点 闘争心みなぎる目 距離の壁越える血の力
2024年10月15日 05:30 乱菊舞台に羽ばたく親子鷹だ。鈴木康弘元調教師(80)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第85回菊花賞(20日、京都)ではコスモキュランダ、アーバンシック、メイショウタバル、ヘデントールの4頭をトップ採点した。中でも達眼が捉えたのは鷹のようにどう猛なメイショウタバルのまなざし。父ゴールドシップ譲りの闘争心を宿した目が菊の大輪を射程に入れた。
子は親を映す鏡といいますが、それにしても似過ぎている。頭を上げてカメラマンを見据えるメイショウタバル。そのまなざしに触れた途端、9年前の父親の表情がまぶたに浮かびました。有馬記念出走馬の調教を見るため栗東トレセンを訪れた時のこと。最有力視されるゴールドシップを管理する須貝調教師に案内されて厩舎の鼻前に立つと…。
馬房の奥にたたずんでいたあの芦毛馬が耳を絞って威嚇しながらこちらへ突進してきました。馬房の入り口に仕切りがあるため事なきを得ましたが、ヒグマにでも出合ったような身がすくむ思いでした。メイショウタバルのまなざしは父ゴールドシップの人を射すくめる目つきと同じです。目は心の窓。鷹のようにどう猛なまなざしから父譲りの激しい気性、燃えたぎる闘争心がうかがえます。まさに親子鷹です。
背と腹下が短いマイラー体形。3000メートル向きとは言えませんが、身体的な距離の壁を気性で乗り越えてしまうのがステイゴールドからゴールドシップやオルフェーヴルへ続く荒ぶる血統の凄みです。苦しくなってもハミをかみしめる強いカン性が備わっている。サラブレッドは血で走るとも気で走るとも言われますが、血も気も備えているのです。
今春から少しだけ大人になったみたいです。皐月賞(17着)、ダービー(出走取消)の前は血気にはやるガキ大将みたいに全身に力をみなぎらせながら立っていましたが、ひと夏越して春ほど気負わなくなりました。
休み明けを使われてすっきり仕上がっています。筋肉量も十分。毛ヅヤも良好。逃げ切った神戸新聞杯のようにテンパらずゲートインできれば…。子は親を映す鏡。12年前の菊花賞を制したゴールドシップ譲りの闘争心で距離の壁を突破できるかもしれない。菊の大輪に狙いを定める親子鷹です。(NHK解説者)
◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の80歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長。JRA通算795勝。重賞27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。