【サウジC】パンサラッサの歓喜を再び!フォーエバーヤングも 池田元厩務員特別手記でエール

2025年2月19日 05:30

23年パンサラッサでサウジCを制し、口取り写真に納まる(右から)矢作師、池田厩務員、吉田豊(AP)

 歓喜を再び!パンサラッサのサウジC勝利から2年。国内外を問わずチャレンジを続ける矢作厩舎が今年もサウジCデー(22日、キングアブドゥルアジーズ)に照準を合わせている。サウジCにフォーエバーヤング(牡4)、ネオムターフCにシンエンペラー(牡4)、サウジダービーにミストレス(牝3)と3頭がスタンバイ。パンサラッサの担当スタッフを務め、23年9月に定年を迎えた元厩務員の池田康宏氏(66)が本紙に特別手記を寄せ、エールを送った。

 一昨年9月に定年で退職してからも変わらず競馬を見ています。京都や阪神、東京競馬場に行ったりして、馬券も買っていますよ。18年半お世話になった矢作厩舎の馬はもちろん、所属騎手の(坂井)瑠星や(古川)奈穂のことも毎週、応援しています。
 パンサラッサでサウジCを勝たせていただき、もう2年。担当した当初はまさか、あんな世界の大舞台で活躍できるとは思っていませんでした。当時3歳(20年)のオクトーバーS(2着)から担当させてもらいましたが、今までで一番と思うくらい暴れ方が半端じゃなかったです。何度もかまれましたし、過去には洗い場でつながれている時、鎖をひきちぎって逃げ出した時もありました。当時は隣の馬房に同世代の3冠馬コントレイルがいました。取材されている姿を見るたびに指をくわえていいなあ、と思ったものです(笑い)。

 活躍できたのは4歳時、マイラーズCで競走除外になった後の決断が大きかったです。左前脚の深管骨瘤(しんかんこつりゅう=管近位後面の深部に骨瘤を形成する疾患)を痛がったため、親分(矢作師)が「この馬は将来があるから半年、休ませる」と言いました。3カ月間は何もせず、じっくり休ませたことで痛いところがなくなり、歩様が柔らかくなりました。秋に復帰してからはオクトーバーSから連勝で福島記念を勝ち、翌年は中山記念とドバイターフ(1着同着)も勝てました。下積み期間が長かっただけで、ポテンシャルは元々あったんだと思います。

 サウジCでダートに挑戦すると聞いた時は親分を信じるだけでした。「ダートの質が日本とは違う」と聞いていて、いざレースが始まれば4角を過ぎても先頭に立っていたので、これはいけると思いました。ゴールした直後に親分に抱きつかれ、涙腺が崩壊。立っていられなくなりました。嫁に「あんた、泣き過ぎやろ」とLINEで突っ込まれたほど。本当に最高の気分でした。

 矢作厩舎は毎年、海外に挑戦し、スタッフもみんな慣れています。ノウハウを知っているし、僕が心配することは何もないです。一昨年のサウジアラビア遠征はバスラットレオン、コンティノアール、ジャスティンを含めて4頭でしたが、同じ厩舎で一緒に移動できたのは大きいですね。

 フォーエバーヤングは昨年サウジダービーで現地を経験した強みがあります。空港での待機時間、コンテナでの輸送もある中、ドバイや米国も渡り歩いてメンタルが強い。5日の追い切り時計(CWコース6F77秒6~1F11秒3)を見ても(時計が出やすい)ポリトラックでやったの?と思うくらい。搭載エンジンが違いますよね。(担当の)渋田助手に聞いても、ここで海外G1を勝つんだという意気込みを感じます。昨年は米国で惜しい競馬が続いたし、何とか獲ってもらいたいですね。

 瑠星は15歳で競馬学校の騎手候補生の頃から知っています。当時は(身長が1メートル65くらいで)自分と目線が一緒だったのが懐かしい。「お世話になります、池田さん」とあいさつされ、まだ少年でした。おごらず、このままスタージョッキーになってほしいです。
 サウジCは力のある馬がそろい、その中でも強敵は香港のロマンチックウォリアーだと思います。芝で無類の強さを発揮しているし、ドバイで前哨戦を使って早めに現地入り。初ダートの分、やってみないと分からない面はあるけどパンサラッサのように、はまる可能性は十分にあるでしょう。こういったメンバーを相手にフォーエバーヤングが勝って、みんなが喜んでいる姿を見たいですね。 (元矢作厩舎スタッフ)

 ◇池田 康宏(いけだ・やすひろ)1958年(昭33)7月16日生まれ、兵庫県宝塚市出身の66歳。74年に栗東・松永善晴厩舎のスタッフになり、師の定年引退による厩舎解散に伴って05年開業の矢作厩舎へ。グロリアスノア(10年根岸S、武蔵野S勝ち)、タイセイドリーム(16&18年新潟ジャンプS勝ち)、ホウオウアマゾン(21年アーリントンC勝ち)などに携わり、パンサラッサで制した22年ドバイターフ(1着同着)、23年サウジCのG12勝を含む重賞11勝。49年半、厩務員を勤め上げ、23年9月に定年退職した。

 ▽23年サウジC 最内1番枠のパンサラッサは五分のタイミングでスタート。吉田豊が軽く気合をつけるとスッと行き脚がついた。思い描いた通りハナを切り、距離ロスのない内ラチ沿いでリズム良くラップを刻む。手応え良く4コーナーを回って余力十分に直線へ。この時点で前からパンサラッサ、ジオグリフ、クラウンプライド、カフェファラオの並び。日本勢が上位独占!?に見えたところで突っ込んできたのが米国馬カントリーグラマーだ。外から勢い良く伸びて、まとめてかわす勢い。それでもゴール前、パンサラッサがしぶとさを発揮して3/4馬身差で粘り勝ち。レース創設4年目で日本馬初勝利のゴールに飛び込んだ。

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