桜井助手 タガノビューティーに「G1獲らせたい」 昨年Jpn1初制覇…引退撤回でまだ続く出世物語
2025年2月21日 05:15 2歳の頃から苦楽をともにしてきた。タガノビューティーは昨年7歳にしてJBCスプリントで初のJpn1制覇。引き揚げてくる相棒の横で桜井助手は大粒の涙を流した。「イコピコやハクサンムーン、これまで担当させてもらった馬でG1に届かなかったからかな。ビューティーへの思いや乗り役の(石橋)脩さんと一緒に勝てた喜びがあふれました」としみじみ。デビュー38戦目にしてつかんだ初の栄冠に感極まった。
トレセンに入って初めて担当したイコピコは忘れられない存在。09年神戸新聞杯を制し、菊花賞4着、有馬記念にも出走(8着)した。11年夏至Sで右第1指関節を脱臼。予後不良と診断された。「自分の経験のなさから駄目な部分が出て、故障させてしまった」。相棒の死を無駄にしてはいけない。悲しみを乗り越え、前を向き、馬づくりに打ち込んだ。携わった全ての馬との経験が今に生きている。
タガノビューティーは普段やんちゃな一面を見せる。調教中に立ち上がった際に桜井助手は胸部を圧迫され、ろっ骨を骨折するなど過去3度負傷。それでも、いざ走り出すとレースに集中し、気性の激しさがいい方に出ている。「大きな上積みこそないけど年を取ったな、という感じもしません。いい意味でフレッシュ。最後は確実に伸びてきますから」と持ち味をアピール。気力、体力は衰え知らず。8歳になり、円熟の域に達している。
フェブラリーSは昨年0秒2差4着と惜しい内容。東京ダート1600メートルは【3・3・2・4】と走り慣れている。「基本エンジンのかかりが遅いので東京マイルはベスト。ジョッキーもコース的に一番、乗りやすいと言っています」と適性を強調する。久々の前走根岸Sはスタート直後につまずいて落馬、競走中止となったが「目に見える分にはダメージはありません。幸い傷一つなく、その後も通常のメニューをこなして元気ですね」と心配無用だ。
「この馬が僕の名を上げてくれて“ハクサンムーンの人”から“タガノビューティーの人”にしてくれました。Jpn1というのはそれほど大きいもの。次はG1を獲らせたいですね」
当初はここを最後に引退、種牡馬入りの予定だったが水曜に西園正師が現役続行を発表した。まだまだ続く出世ロード。地方に続き、JRAの勲章を獲りに行く。
◇桜井 吉章(さくらい・よしあき)1985年(昭60)5月5日生まれの39歳。兄・嗣久助手(つぐひさ=栗東・高橋一厩舎)の影響で馬の道を志す。08年4月にJRA競馬学校(厩務員課程)に入り、12月に卒業。09年5月から栗東・西園正厩舎スタッフ。担当助手としてイコピコ(09年神戸新聞杯勝ち)、ハクサンムーン(12年京阪杯、13年アイビスSD、セントウルS勝ち)などに携わった。19年からタガノビューティーを担当している。