和田竜二騎手 憧れの師匠の背中を追って調教師免許合格「騎手で勝てなかったダービー勝つ」

2025年12月12日 05:30

調教師試験に合格し、ガッツポーズを決める藤岡佑介騎手(左)と和田竜二騎手(撮影・中辻 颯太)

 冬のトレセンにサクラサクの吉報が届いた。JRAは11日、26年度調教師免許試験(新規)の合格者4人を発表。現役騎手は和田竜二(48)、藤岡佑介(39)と栗東の2人が難関を突破した。美浦は古賀大生助手(35=松山)、三樹祐輔助手(41=矢野)が合格し、トレーナーの道へ。それぞれ新たな一歩を踏み出す。

 大きな一歩を踏み出した。多くの競馬関係者が見守る中、午前10時に栗東トレセンの掲示板に調教師試験の合格者一覧が張り出され、そこに「和田竜二」の名前があった。妻と自宅で吉報を受けた和田竜は「家族の支えがなければ、ここまでたどり着けなかった。(妻も)喜んでくれた。うれしい気持ちでいっぱいです」とさわやかに喜んだ。

 師匠である元調教師の岩元市三氏の背中を見て、騎手引退後は調教師の道に進むことを決意した。3月に騎手デビューした息子の陽希が競馬学校に合格したあたりで調教師試験の勉強を始めたが一昨年、昨年と2年連続で不合格。昨年10月5日はレース前の馬場入り後に落馬し、右大腿骨など複数の箇所を骨折する不運もあった。何度も心が折れそうになったが「家族にケツを叩いてもらった」と心強い味方が常にサポート。「今回が最後ぐらいの気持ちで受けました」とケガで入院中はベッドの上で猛勉強に励み、三度目の正直で難関を突破した。

 96年に岩元厩舎所属でデビュー。G1・7勝テイエムオペラオーとの名コンビで四半世紀前の競馬界を盛り上げた。今でも忘れられない名馬の背中の感覚を基本に騎乗し続ける。18年宝塚記念はミッキーロケットで17年ぶりのJRA・G1制覇。最後まで諦めない豪快なスタイルで現役4位の2万2115回騎乗、現役9位の1531勝を積み重ねる。「いいことも大変なこともたくさんあったけど、多くの人に支えられ、悔いのない騎手人生を送れたと思います」と力強く語った。

 岩元氏は厳しい中にも愛があり、憧れの存在。調教師としての目標は「騎手で勝てなかったダービーを勝つこと」と掲げた上で、「岩元先生のような誠実な調教師を目指して。お世話になった先生や関係者との縁を切らさないようにしたい。先生と一緒に牧場を回る夢もあります」と満面の笑みを浮かべた。

 競馬学校12期生の調教師は高橋亮師(免許取得12年)、福永師(同23年)に続く3人目となった。騎手生活は残り2カ月半。阪神JFは13分の7の抽選を突破した関東馬スタニングレディと新タッグで挑む。「結果を出さないといけない世界。乗せていただいた馬で最高の結果を出せるように今後も頑張ります」と全力プレーを誓った。最後の1鞍まで気持ちを前面に出した熱い騎乗でファンを沸かせる。

 ≪福永師「一緒に盛り上げる」≫花の12期と呼ばれる和田竜の同期・福永祐一師(49)は調教スタンド1階のジョッキールームで藤岡と一緒に合格発表を心待ちにした。張り出された吉報に終始、笑顔の福永師は「良かった。和田も佑介も頑張ったからね。まだまだこれから。これから同じステージで切磋琢磨(せっさたくま)して、一緒に競馬界を盛り上げていきたい」と両人にエールを送る。続けて「同期から(高橋亮師を合わせて)3人、調教師か…。時の移ろいを感じる」と、しんみり話していた。

 ≪鈴木孝師エール 人柄を絶賛≫かつて岩元市三厩舎の調教助手として、厩舎所属の和田竜とともに馬づくりに励んだ鈴木孝志師(54=写真)がお祝いの声を寄せた。「合格おめでとうございます。もう30年くらいの付き合いになりますね。宴会部長のイメージがあるかもしれないけど岩元イズムを引き継いでいる真面目な性格だから」と祝福しつつエールを送り、誰からも好かれる和田竜の人柄を強調。元同僚で10年3月の厩舎開業後もつながりが深く、騎手別で最多749鞍の騎乗を依頼している。

 ▼和田陽希(和田竜二の長男で今年デビュー)自分のことのように緊張しました。去年、不合格になって落ち込んでいましたから。馬に乗りながら四六時中、勉強していました。父の馬に乗りたいですね。開業するまでに、うまくなります。親子ともども応援してください。

 ▼高橋亮師(和田竜と競馬学校の同期)本当に良かった。年齢的にもちょうどいいし、息子さん(陽希)もジョッキーになって、いろいろな意味で良かった。ジョッキーとしても凄い成績を残しているし、同期として心から祝福したい。

 ◇和田 竜二(わだ・りゅうじ)1977年(昭52)6月23日生まれ。滋賀県出身の48歳。96年に栗東・岩元市三厩舎所属でデビュー。ルーキーイヤーのスポニチ賞ステイヤーズS(サージュウェルズ)でJRA重賞初制覇、テイエムオペラオーとのコンビで99年皐月賞、00&01年天皇賞・春連覇などG1を7勝した。競馬学校の同期に高橋亮師、福永師、古川吉ら。JRA通算2万2115戦1531勝、うち重賞はG1・8勝を含む50勝。1メートル65、50キロ。血液型O。

 ▽JRA調教師試験 受験資格は28歳以上。第1次が筆記試験と身体検査、合格すると第2次で口頭試験と人物考査が行われる。いずれも競馬法規や調教、馬学など幅広い専門知識を問われる。合格後はタイミングにもよるが技術調教師として1年ほど研修、準備期間を経て開業するケースが多い。今年の申請者は118人、第1次試験が9月10日で合格者14人、第2次試験は12月2~4日に行われた。新規調教師免許の有効期間の始期は原則として翌年1月1日。現役騎手に関しては選択可能で藤岡、和田竜ともに本人の申請により始期は来年3月1日となる。

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