【有馬記念】加藤士師 話題の日高生産馬 コスモキュランダ得意舞台「チャンスはある」
2025年12月24日 05:30 水曜企画「G1追Q探Q!」は担当記者が出走馬の陣営に聞きたかった質問をぶつけて本音に迫る。25年中央競馬の総決算となるグランプリ「第70回有馬記念」は東京本社の菊地一(23)が担当。コスモキュランダで当レースに初めて臨む加藤士津八師(40)を徹底取材。「中山適性」「父子制覇」「有馬への思い」の3テーマで聞いた。
【中山適性】ここ2走、思うような結果が出ていない。ただ、加藤士師は前向きだ。中山への自信。当地はキャリア8戦で【1・4・1・2】。弥生賞Vを筆頭に、重賞で4度馬券内に好走している。「ビッグレッドファームが坂路メインで調教しているから、(コスモキュランダは)坂が得意」と説明。皐月賞では最後の急坂でグンと加速、首差2着に食い込んだ。もう一つの武器は立ち回りのうまさ。「直線でよーいドンよりも、テクニカルなコースの方が合っている」。弥生賞(1着)、セントライト記念(2着)、AJC杯(3着)では道中でポジションを押し上げる器用さが光った。近2走は直線の長い東京での末脚勝負に屈したが、「乗り難しい中山は強い馬もミスする可能性がある。良い状態をキープしているし、展開が向いてくれればチャンスはある」と得意舞台での反撃に自信がのぞいた。
【父子制覇】加藤士師は騎手時代も含め、有馬記念初参戦となる。父・和宏師は騎手時代の1980年にホウヨウボーイで当レースを勝利、コスモキュランダが勝てば父子制覇となる。過去の父子制覇は武邦彦&武豊、野平省三&野平祐二、池江泰郎&池江泰寿、須貝彦三&須貝尚介、横山典弘&横山武史ら。その思いを尋ねると「父が有馬を勝った時、僕はまだ生まれていなかったので…。特に気負わずレースに臨みたい」と淡々とした口ぶり。父子制覇は後からついてくるもの。今は“調教師・加藤士津八”としてレースに全集中する。
【有馬への思い】師走を迎え、加藤士師は改めて競馬界の盛り上がりを実感している。「(ドラマ)ザ・ロイヤルファミリーの影響で(今年の有馬は)注目度が高まっていますね」。連覇を目指すレガレイラは、ファン投票で歴代最多を更新する61万2771票を獲得。歴代最多だった昨年のドウデュース(47万8415票)を13万票以上も上回った。コスモキュランダは同ドラマで話題となった日高地区の生産馬。「良いタイミングで有馬に出走できますね。ここで良いレースができれば、厩舎の注目度や評価が上がるのでうれしい」と頬を緩ませた。作中で有馬記念を制したロイヤルファミリーに続き、日高生産馬が勝つ。ドラマチックな結末を期待していた。
◇加藤 士津八(かとう・しづや)1985年(昭60)2月2日生まれ、茨城県出身の40歳。父はダービージョッキー(85年シリウスシンボリ)で現調教師の加藤和宏。美浦・国枝栄厩舎所属で03年3月に騎手デビュー。JRA通算1054戦20勝で11年に騎手を引退。その後は父の厩舎で調教助手を務め、18年に調教師免許を取得。JRA通算1734戦118勝。重賞3勝。
≪取材後記≫加藤士師に思い出の有馬記念を聞いた。「デビュー前のマツリダゴッホに調教で乗ったことがある」。まだ騎手デビューして間もない頃、07年にグランプリを制するトップホースの背中にまたがった。「こういう馬が有馬記念を勝つんだなと思った」と懐かしげに語ってくれた。父・和宏師に憧れて志した競馬の世界。騎手としては通算20勝と結果を残せなかったが、調教師として有馬記念出走の時を迎えようとしている。他馬を幻惑させるコスモキュランダの捲りが飛び出すのか。展開にスパイスを与え、レースを楽しくしてくれそうだ。(菊地 一)
