【有馬記念】JRA初の女性調教師・前川師 1年目にサンライズジパングで挑戦「自分も働いて働いて…」

2025年12月24日 05:30

坂路で調整したサンライズジパング(撮影・亀井 直樹)

 区切りの第70回を迎えるグランプリに新しい風を吹き込むか。今年3月に開業したJRA初の女性トレーナー前川恭子師(48)が「有馬記念」にサンライズジパングを起用する。自身の管理馬としては、これが2戦目。中2週で上昇カーブを描きながら、芝替わりで良さを引き出すイメージだ。皐月賞馬ミュージアムマイルを管理する高柳大輔師(48)らも初有馬となる。

 JRA初の女性調教師として注目を集めながら今年3月に開業。その初年度の有馬記念にサンライズジパングを送り出す。前川師は「出られるのは光栄なこと。こういうチャンスに巡り合えたので良かったです」と気を引き締めた。

 有馬記念について「お祭り的なイメージはあります。今年はドラマ(TBS日曜劇場ザ・ロイヤルファミリー)でも盛り上がりましたしね」と印象を伝える。その思い出は「中学1年の頃ですかね。(90年に)引退レースで勝ったオグリキャップ。乗馬をやっていて馬が好きでしたし、周りに競馬好きな人もいて。武豊さんもめちゃくちゃ格好良かったです」と回想した。

 今年は厩舎開業の節目があり、目まぐるしく時が流れた。「凄く忙しかったです。やってみないと分からないと思っていた中で経験豊富なスタッフが多く、自分としてもやりやすいです」と振り返る。モズメイメイでのG1初出走(高松宮記念13着)、ワイワイレジェンドがテレビ静岡賞Vでオープン入り。厩舎として着実に経験を積んだ。

 サンライズジパングは転厩初戦のチャンピオンズC8着から中2週のローテ。参戦の経緯について「ホープフルS3着(23年)で芝の実績があるし、平井君(解散前の音無厩舎で携わり、現在も担当スタッフを務める調教助手)が舞台が合いそうだと言ってくれたので」と説明。「一度使って走りが軽くなっています」と上昇ムードが漂っている。昨年、技術調教師として矢作厩舎で研修した経験もこの決断を後押しした。「競馬までの仕上げ方が凄く参考になりました。矢作先生の大胆さを見ていなかったら、ここで有馬記念に使う選択肢はなかったかもしれません」とうなずいた。

 今年は政界でも高市早苗氏が史上初の女性首相に就任。決意表明として用いた「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」が「新語・流行語大賞」に選ばれるなどインパクトを残した。前川師は「自分も働いて働いて、ですね」と頬を緩ませた。この一年を漢字1文字で表すなら、という質問には少し間を空けて「女」とした。「女性ということで注目していただいたのは間違いないです。そのアドバンテージはあると思いますし、それを生かせたら」と意気込んだ。JRA女性調教師の第一人者として道を切り開いていく。

 ◇前川 恭子(まえかわ・きょうこ)1977年(昭52)4月9日生まれ、千葉県富里市出身の48歳。筑波大卒業後、牧場で経験を積み、03年7月にJRA競馬学校厩務員課程入学。同10月から栗東・崎山博樹厩舎で厩務員を経て調教助手。ウエスタンダンサーの担当スタッフを務め、08年京阪杯を制した。厩舎解散に伴って19年3月に坂口智康厩舎へ。23年12月、調教師試験に合格し、JRA初の女性調教師になった。今年3月に厩舎を開業し、JRA通算224戦7勝。

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