【ダービー】ロブチェン 房野助手の経験超えた“超合金クロビカリ”

2026年5月26日 05:27

2冠に挑むロブチェンと房野助手

 【見たこともない景色(2)】割れた腹筋、隆起する上腕二頭筋、細かく発達した前腕筋群。馬乗りとして隙なく鍛え上げられた房野助手の体は若く、とても47歳に見えない。柔らかい鋼のようだ。全てはロブチェンに出合うために用意された体。今ならそう確信できる。その房野助手が愛馬をこう例えた。

 「この馬は“超合金クロビカリ”ですよ。実写版をやるときはオファーが来ると思います(笑い)。ほぼ“ビスケット・オリバ”みたいなもんです」

 読者に説明が必要だろう。前者は漫画「ワンパンマン」に登場するS級ヒーロー。筋肉モリモリの巨漢。後者は「刃牙」シリーズに登場する、こちらも筋肉の塊。簡単にいえば最強で無敵の存在だ。

 「この馬のことは新馬の頃から“独特”と表現してきました。僕の経験を超えてくる。あっさりG1を2つですよ。皆さんが見て分かるように凄い走りをする。ああいう走りができる馬はそういない。プロ野球の野茂さんとかイチローさんが世に出た時に“なんや、あのフォーム”と思われた。それは異端だから。でも結果的に時代を切り開き、最高の選手になった」

 房野助手が多くの記者に愛される理由は、この饒舌(じょうぜつ)にある。来る者を拒まず、時間を惜しまず、身ぶり手ぶりで熱弁を振るう。大学の工学部に在籍した経験がある理論派。話に説得力がある。

 ここにたどり着くまでには少なからず苦労もあった。馬乗りとしての礎になっているのが、福島信厩舎時代に担当したナムラクレセントだ。08年菊花賞3着、11年阪神大賞典で重賞初制覇を飾ったがG1には手が届かなかった。焦燥感、自分の無力を感じた。

 「阪神大賞典を勝ったのが6歳ですよ。感動より、やっとか…という思いでした。クレセントで自分の考えがガラッと変わった。変えざるを得なかった」

 07年暮れのデビューからJRA所属馬としてのラストランとなった12年天皇賞・春9着まで4年4カ月。元相棒の存在が転機となり、ロブチェンの活躍にもつながっていく。(オサム)

 ◇房野 陽介(ふさの・ようすけ)1979年(昭54)2月12日生まれ、神戸市出身の47歳。広島大工学部中退後、イクタトレーニングファーム(愛知県豊田市)で4年半、経験を積み、JRA競馬学校厩務員課程を経て栗東トレセンへ。福島信晴厩舎でナムラクレセント(11年阪神大賞典V)を担当。18年2月末、師の定年引退による厩舎解散に伴って杉山晴紀厩舎へ。ケイティブレイブ(18年JBCクラシックV)、ゲルチュタール(26年日経新春杯V)などを担当。

 ▽超合金クロビカリ 漫画およびアニメ「ワンパンマン」に登場するプロヒーロー。S級11位にランクされ、シルバーファングと並び称される肉弾戦の頂点。ひたすら鍛え上げた強靱(きょうじん)な筋肉と圧倒的防御力を誇る。

 ▽ビスケット・オリバ 人気格闘漫画「刃牙」シリーズに登場。超人的な腕力と知力を持ち、米国の刑務所を拠点にしながら国家をも凌駕(りょうが)する権力と自由を誇る。「地上最自由」(ミスター・アンチェイン)の異名を持つ。

 ○…ロブチェンは衝撃レコードVの皐月賞からさらにレベルを上げている。房野助手は「落ち着いていて雰囲気がいい。もっと上があるという意味で皐月賞前は60点と言ったけど、今は65点」とうなずく。「ウサギとカメの話があるけど、自分は泥くさく最後まで一生懸命に走るウサギを育てたい。皐月賞を勝って追われるのではなく、突き放す立場のつもりで調教に取り組んでいる。ここまで順調に来られているのが一番。案外ダービーを楽しめている」と終始、笑顔だった。

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